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カンガ
第五章

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「そちらにも使えるとは」
「そうした服です」
 また言ったワンガリだった。
「ご家族へのプレゼントにもどうでしょうか」
「そこでビジネスですか」
「いえ、買って頂くのではなく」 
 ワンガリはフリードリヒに顔を向けて笑顔で話しあt。
「プレゼントです」
「私の家族への」
「はい、どうでしょうか」
「何か悪いですね」
「いえいえ、スワヒリ人は遠慮が嫌いでして」
「それは初耳ですが」
「少なくとも私とこの村の人達はそうです」
 こう笑顔で言うのだった、フリードリヒに。
「ですから」
「カンガをですか」
「はい、どうぞ」 
「そうですか、ではお言葉に甘えまして」
「それでは」
 フリードリヒは笑顔でだ、ワンガリの言葉を受けた。そして。
 貰った見事な何枚かのカンガを家に帰った時に妻にプレゼントした、息子達はもう成人してドイツにいるのでケニアに夫婦でいるのだ。
 それでだ、彼はプレゼントした次の日に大学でワンガリに食事を摂りつつ話した。食べているのはケニアの料理と紅茶である。
 フリードリヒはドイツ人なのでコーヒー派だ、だが紅茶にも抵抗がないのでそれでその味も楽しみつつ言うのだった。
「妻は喜んでくれましたが」
「それでもですか」
「はい、ただ村の人達とは違いまして」
「違うといいますと」
「ドイツにいた時からソーセージとジャガイモとケーキが好きでして」
 それでというのだ。
「あと無類のビール好きなので」
「わかりました」
「はい、ですから試着したところ」
 どうなったかというのだ。
「丸太みたいでした、お腹も出ていて」
「そうですか」
「はい、残念なことに」
 苦笑いでだ、ビーフシチューであるカランガやチャパティというパン、それにトウモロコシを豆を煮合わせたギゼリ等のケニア料理を食べながら話した。
「何しろドイツは肥満大国ですから」
「それは聞いていますが」
「あと痛風と薄毛もです」
 この二つもというのだ。
「問題になっていますから」
「それで肥満もですか」
「妻もそうでして」
「だからカンガもですか」
「村の人達の様にはいきませんでした」
「そうですか」
「は、とても」
 そうだというのだ。
「これがです」
「それは何といいますか」
「それとテーブルクロスに使っています」
「それもですか」
「むしろそちらの方が有り難いと妻も言っています」
「何といいますと」
「まあそういうことで」
 フリードリヒは共に食べるワンガリに話した、そしてそれからは学術的な話になった。少なくともカンガは彼にとっては素晴らしい贈りものだった。


カンガ   完


                        2016・5・30
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