18部分:雪の下浜松屋の場その三
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礼ゆえそれ位のものでよろしいかと思いますが」
与九「ほう、御婚礼ですか」
弁天「あ、これ。言うなどと」
南郷「いや、うかりとしました。失敬」
この時左手から茶が来る。
赤星「番頭」
与九「何だい」
赤星「お茶が届きましたが」
与九「お、早いな」
赤星「はい、こちらです」
ここで彼等は弁天と南郷から目を離し茶に視線を移す。その時に赤星はやはり二人に目で合図をする。二人は頷きまず弁天が動く。緋鹿子の布を懐に入れる。赤星はそれをしかと見ている。
そしてすぐに与九にそっと耳打ちする。与九はそれを受けて頷き他の者にも言う。弁天と南郷はそれには気付かないふりをしている。
与九「(怖い顔で)もし」
南郷「おう」
与九「悪ふざけはいけませんな」
南郷「?何のことだ」
与九「いえね、そちらのお嬢様が」
南郷「お嬢様が如何いたしたか」
与九「お隠しになったものをお出しして欲しいのですよ」
南郷「それは一体どういう意味だ(弁天を庇って)」
与九「はっきり申し上げましょうか。そちらのお嬢様が万引きをなさったのですよ」
南郷「馬鹿なことを言うな、お嬢様がその様なことを為される筈がなかろう」
与九「いや、私もそう思ったのですがね。こちらの者が(ここで赤星を指し示す)」
赤星「間違いありません。この目で見ました」
南郷「(憤るふりをして)痴れ者、戯れ言を言うとい許さんぞ」
赤星「嘘ではございませんよ。この商売を長い間やっておりますから」
与九「その通り、この者はうちの店に来る前からこの手の商売をしておりましてね」
赤星「へい、前は京におりました」
南郷「京だと。この前赤星十三郎が暴れていたところか(弁天はその後ろで震えている)」
赤星「おやおや、またえらく名のある盗人を」
南郷「ふん、その名は天下に知られておるわ」
赤星「本人が聞いたら喜びますな。で、そちらのお嬢様は何も言われないのですかな」
与九「そう。さもないと身体にお聞きしますぞ」
小僧「早くお出しなさい。さもないと痛い目に遭いますぞ」
そう言って彼等は南郷と弁天と引き離す。
弁天「(おろおろして)これ四十八、どうしたらよいのじゃ」
南郷「何、心配なさいますな」
弁天「しかし」
南郷「言うに事欠いてお嬢様を万引きと言うとは。この落とし前つけさせてやります故」
弁天「それでもこの者達は」
南郷「ここはこの四十八にお任せ下さい。よいですね」
弁天「う、うむ」
与九「(弁天に向かって)まだ仰られないのですかな」
弁天「何を」
与九「万引きされたことですよ。証拠もありますぞ」
弁天「証拠」
赤星「(弁天を捉えて)こちらに(そして懐を引っ張る)」
弁天「あれえ」
懐から緋鹿子が出て来る。南郷それを見て顔を凍らせる。
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