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第二十三話 要塞を建設します。
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条文条項の中に、長く忘れ去られていた。

 この条文がありながらそれが長い事適用されてこなかったのは、一つにはそうした過半数の賛同を得られるだけの人望とコネクションをもつ本部長があまりいなかったこと。そして一つにはそうしたものをもっていたとしても改革に迫られるような事態事案を抱え込んでいなかったことがあげられる。
ブラッドレー大将は自身のコネクションを最大動員し、評議会委員の過半数の賛同を取り付けてしまったのである。それもこれもすべて要塞建設のために、という合言葉をかざして。

 軍組織の連中が気がついたときには、すでにこの条項は正式に発動され、いつの間にか統合作戦本部には改革スタッフの部屋が出来上がっているという始末であった。
 この特務組織の長はブラッドレー大将自らが兼任し、その下に、シャロン、キャゼルヌ、そしてヤンがつくというものである。
 中将、少将などは敢えて入れていない。彼らの多くは適宜無事に職務を遂行してきた人間であり、ダイナミックな想像力に欠けている。しかもそういう人材を入れれば、そこは階級社会、若い佐官等が思ったように意見を言えないということもあろう。若いスタッフに存分に腕を振るってもらい、改革をけん引してほしいというのがブラッドレー大将の願いであった。

 当然、各課からものすごい抗議が上がり、ブラッドレー大将の進退問題にまで発展しかけたが、突如それはぱったりとやんだ。トールハンマーの破壊力を見せつけられ、要塞建設を熱望する最高評議会、政財界の有力者たちが、あらゆる手段でそれぞれの部署に圧力をかけてきたからである。
 帝国はいざ知らず、文民統制を一応の建前とする自由惑星同盟の軍隊にとっては、その文民からの指示を失うことは自分たちの手足をもがれることに匹敵する。彼らは渋々ながら従ったが、改革スタッフには終始冷ややかな目を向けることとなった。

 まともな神経の持ち主なら、おそらく耐えられなかったであろうが、ブラッドレー大将が選抜した3人はいずれもその点に関しては申し分ないほどの太い神経の持ち主であった。

 ヤン、キャゼルヌ、シャロン、彼ら三人(当然下には数十人、数百人のスタッフはついているが。)に課せられた任務は、司令官級の人材の育成、登用、最新鋭艦のテスト開発、補給路線の効果的な構築、艦隊編成等盛りだくさんである。
 こうしたことは本来であればもっと大勢の人で協議すべきものなのかもしれないが、ブラッドレー大将は時間を優先した。頭数が多いほど「船頭多くして船山に上る」などという事象が起こりうるのを恐れたのだ。むろん当初は3人であるが、徐々にこれらを増やしていく予定でいる。

 ヤンにしてみれば、そんなものよりも歴史書に埋もれて生活したかったと言いたいだろうが、ブラッドレー大将にしてみれば、ヤンに目を付けて
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