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青砥縞花紅彩画
14部分:神輿ヶ嶽の場その四
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同じこと」
千寿「それでは二人で」
赤星「はい、三途でまた御会いしましょう」
千寿「わかりました。ではお先に」
赤星「はい」
 千寿は川に飛び込む。舞台から飛び降りる。そして姿を消す。
 後には赤星だけが残る。赤星は千寿を見送るが暫くして意を決する。
赤星「姫、それがしも御供致します」
 そう言って腰の刀を抜く。それで腹を切ろうとする。そこに右手から忠信が出て来る。
忠信「(赤星が腹を切ろうとしているのを見て慌ててやって来る)あいや、待たれよ」
赤星「(それを払おうとして)止めて下さいますな」
 そして無理矢理腹を切ろうとする。忠信はその手をとる。
忠信「だから待たれよ、死に急いで何になりましょうか」
赤星「これには事情がござる」
忠信「死のうとされるからにはそうでござろう。しかし若いみそらでそう思い詰められるのはよくないですぞ。よかったら拙者にわけを話しては下さらぬか」
赤星「(忠信の顔を見て)よろしいのですか」
忠信「(頷いて)無論。ささ、話されよ」
赤星「(納得して)ではお話しましょう、それがしの身の上を」
忠信「はい」
赤星「元々私は信田の家来、お主は讒首のその為に御命捨てられ、御家は断絶、ただお痛わしきは後室様、それを気病みに御大病、値えの高い良薬故心ならずも百両の金が欲しさに罪科に一人の叔父には縁を切られ、生きていられず言い訳に死のうと覚悟極めし者、御推量なされてくださりません」
忠信「(驚いて)何と、信田の家の方でしたか」
赤星「(頷いて)はい」
忠信「して御名は」
赤星「赤星の子、十三郎と申します」
忠信「何と、赤星様の御子息でしたか。これは失礼(そう言って赤星を上手になおす)」
赤星「(これにきょとんとして)どうなされたのですか」
忠信「私は伝蔵の倅にございます」
赤星「伝蔵とは」
忠信「ああ、昔のことで御存知はありませぬか。赤星家の奉公人で御納戸金の二百両を持ち逃げした若党ですが」
赤星「おお、そうした者がいたというのは聞いておりまする」
忠信「その倅が私です。まさかこの様なところで若旦那様に御会いするとは」
赤星「また何という縁じゃ。しかしこれは好都合」
忠信「といいますと」
赤星「叔父上に伝えてくれい。わしはここで腹を切ったと」
忠信「何を言われます、故主の若旦那様をどうして見殺しにできましょうか」
赤星「しかし御後室様にお渡しする金がなければ結果は同じ」
忠信「それはどれ程でございますか」
赤星「薬代・・・・・・百両じゃが。あることにはあるのじゃ(懐にあるその百両を差し出す)」
忠信「では問題ないのでは」
赤星「それが叔父上が受け取って下さらぬ。盗みの金は要らぬということでな」
忠信「では若旦那様のものと気付かれぬようにお渡しすればよろしいですな」

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