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青砥縞花紅彩画
11部分:神輿ヶ嶽の場その一
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千寿「左様ですか」
弁天「さ、どうか素直にお話下され。咎めはしませぬ故」
千寿「それでしたら。やはり足が痛うございます」
弁天「左様でござったか」
千寿「(頷いて)はい」
弁天「無理もござらん。かなり歩きましたからな」
千寿「それにいささか心細いのです」
弁天「山ですからかな」
千寿「はい」
弁天「(辺りを見回して)ここはかなり深いですからなあ。猪や狼も出ますぞ」
千寿「(それに驚いて)まことですか」
弁天「左様。お気をつけなされ。山は危のうございますぞ」
千寿「わかりました。ところで」
弁天「はい」
千寿「小太郎様の屋敷というのはどちらでしょうか。もうかなり歩きましたが」
弁天「屋敷でござるか」
千寿「はい。仮住まいとお聞きしておりますが」
弁天「如何にも」
千寿「何処でしょうか」
弁天「(思わせぶりに)お知りになりたいか」
千寿「勿論。もうすぐでしょうか」
弁天「はい」
千寿「それはどちらで」
弁天「(ふてぶてしい顔で笑って)ここでござる」
千寿「(最初言葉の意味がわからず)えっ」
弁天「ここが拙者の仮の住まいでござる」
千寿「まことですか」
弁天「左様、実はこの山には二人の盗賊がおりましてな」
千寿「盗賊」
弁天「そうです、そのうちの一人は南郷力丸。この名は御存知ですかな」
千寿「噂では。何でも海賊だったとか」
弁天「その通り。気の荒い男でしてな。そしてその相方もおるのです。その男のことも聞いておりましょう」
千寿「はい。弁天小僧だとか。時として女にも化けるとか」
弁天「そうです、実に悪賢い奴でしてな。色々と悪事の限りを尽くしておるのです」
千寿「何と恐ろしい」
弁天「恐いですかな」
千寿「ええ。その様な者達がこの山に潜んでいるかと思いますると」
弁天「いや、恐がる必要はありませぬぞ」
千寿「(不思議そうに)何故でしょうか」
弁天「そのうちの一人が今ここにおるからです」
 笑みになる。

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