第一部 刻の鼓動
第四章 エマ・シーン
第三節 群青 第一話 (通算第71話)
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めに人を足蹴にする遣り方は肯定のしようがないのだ。
「総員、対宙監視を厳となせ」
「敵影確認、機数は三……いや、四機。《ガンダム》一、《クゥエル》三。目視映像でます」
ブレックスは悠然とした態度を取り続けたまま黙っており、ヘンケンは浮わつき勝ちな初任士官たちへの対応に追われた。《アーガマ》は現在、処女航行中である。熟れた動きができるのは数少ないアナハイムから送り込まれた軍属士官くらいなモノだった。
そもそも、軍人であっても戦場を知るベテランといえば、ブレックスとヘンケン、機関長のトワーガ、技術長のアストナージ、砲術長のベルナード大尉ぐらいのものだ。
「MSの映像でるか?」
「了解。機体照合……接近するMS、二。《ガンダム》、《クゥエル》各一。映像でます、最大望遠です」
トーレスががなった。熟れた感のあるトーレスでさえ、戦闘は初めてだ。声の掠れ具合で緊張が伝わってくる。
ノイズ混じりに写し出されたのは、魔性の禍々しさと不気味さを醸し出すティターンズカラーのMSである。純白の旗が不釣り合いだった。随伴する《クゥエル》の方が旧型機であるが、制式採用されているのは《クゥエル》で、《ガンダム》はパイロット訓練用の機体であるとアストナージから報告が上がっていた。
「MSデッキ!敵は白旗だ。MSを退避させろ!受け入れ準備急げ」
「機関、推力カット!エンジンは暖めたままにしとけっ」
「メガ粒子砲スタンバイ」
「対宙砲座、照準合わせ」
「戦闘艦橋開けっ」
ヘンケンは艦長席に座り込んで矢継ぎ早に指示を出していった。一通り指示を出し終えると、小さく唸り声を挙げた。
「どうかしたかね?」
「いえね、人は足りない、練度は低い――こんな状態の艦をどう切り盛りしたらいいか悩んでいたんですよ」
ブレックスは、笑ってなんのことはないという振りをしてくれるヘンケンに感謝した。実際には由々しき問題である。〈グラナダ〉に戻れば解決するというものではない。数は力だが、全面戦争でない以上、数だけ揃えればいいという訳にもいかない。それに連邦軍の一部隊でもあり、連合軍でもあるエゥーゴが、大きな戦力を持つことはできなかった。だからこそ、少数精鋭の部隊を作り上げなければならないのだ。
「苦労を掛けるな」
「いや、苦労ってほどじゃないですよ。何人連れて帰れるかって話です」
一瞬、真面目な顔を覗かせて、人懐っこい笑みを浮かべた。この笑顔が部下から信頼を寄せられる理由であろう。だが、戦闘に入れば無傷では済まない。幾人の命が失われるのか、考えたくなくとも考えねばならないのが、ヘンケンやブレックスの立場であった。
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