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Three Roses
第一話 運命の薔薇その九

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「マリーだ」
「あの方ですか」
「そなたの姪の一人のな」
「確かに。マリー様なら」
「よいな」
「聡明であられ学問に造詣が深く」
「最初は勝気で我儘だったが」
 しかしというのだ。
「その心が収まり」
「そして今では」
「中庸の心を備えてきた」
「極端には走られませんね」
「そうなってきた、学問を重ねていてな」
「とりわけ語学に堪能ですね」
「多くの国の言葉を理解し喋ることが出来る」
 そうした者だからだというのだ、マリーが。
「それでだ」
「マリー様をですか」
「第三の継承者にしたい」
「王位の」
「そうだ、そしてだ」
 第三の王位継承者を定めてからだ、王は次に入った。
「第四だが」
「マイラ様ですね」
「いや」
 実弟である大公の言葉をだ、王は即座に否定した。
「違う」
「と、いいますと」
「マイラは最後だ」
 こう言うのだった。
「あの娘は第五としたい」
「それはあの方がご側室の」
「それもまた違う」
 マイラが自身と側室の間に生まれた娘である、このことは事実だ。しかしそれが理由ではないとだ、王は大公に断った。
「あの娘も私の娘だ」
「太子、そしてマリー様と同じく」
「母親が違うといえどだ」
「あの方は兄上の娘」
「そうだ、紛れもなくな」
 それ故にというのだ。
「私はあの娘を分け隔てしたことはなかったな」
「これまで一度も」
「王は公平であるべきだ」
 自身の信条もだ、王は話した。
「私の娘であれどな」
「お二方と違いなく」
「これからも接して遇していく」
「では何故なのでしょうか」
 マイラの王位継承が第五であることをだ、大公は問うた。
「それならば」
「あの娘には危ういものがある」
「そのご気質が」
「生真面目であり潔癖だな」
「はい」
 大公もマイラの気質は知っている、叔父として彼女とも彼女が幼い頃から接してきているからだ。他の王の子達と同じく。
「非常に」
「そうだ、非常にだ」
「それ故にですか」
「信仰も同じだ」
「あの方はグレゴリー司教に教わっていますが」
「グレゴリー司教は旧教だ」
 そちらに属しているというのだ。
「新教の教師を付けるべきだったか」
「ですがグレゴリー司教はです」
「我が国の中でも指折りの知識人だ」
「それ故にでしたね」
「マイラの教師としたが」
「その為マイラ様も立派になられましたが」
「旧教の信仰が強過ぎるしだ」
 それにというのだ。
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