9話 一夏戦
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を左手でキャッチする。
一夏も態勢を崩していたが鬼一が離れたのを確認し、雪片弐型を素早く回収する。
だが、鬼一の目的は達成した。
鬼一が起こした神業にセシリアは額から汗が滑り落ち、楯無は呆然と呟いた。
「……信じられない」
そして観客席がその技に応えるかのように爆発した。アリーナを押しつぶしかねないほどの驚愕混じりの歓声が鬼一と一夏の全身に降り注ぐ。だが、それは決して嫌悪感のあるものではない。もはや性別など関係ない。ただ、目の前の戦いが自分たちを興奮に駆り立てた。
鬼一への声援が大きくなる。
鬼一は知っている。観客の力を。
鬼一は知っている。そこから生み出される力を。
鬼一は知っている。失った体力を一時回復させる力があることを。
管制室から試合を見ていた千冬がつぶやく。
「……観客を味方につける、というのは想像以上に侮れない。しかし、こんな方法があるとはな……」
かつて千冬もこれを体験したことがある。
自分にとって空気が悪い、雰囲気が自分の敵だと少なからずメンタルに影響が出るし、それが原因でパフォーマンスの低下になる。逆に自分にとっての声援が増え、雰囲気が良くなれば確実にプレイヤーのテンションは上がる。
それは一部とはいえ失ったスタミナを埋めるほどの力を発揮する。
千冬も何度も体験したことあるが、鬼一のそれとは違う。千冬のは結果的に生まれたものに対して、鬼一は自分で意図して作り上げた。千冬は考えもしなかった。観客を利用して自分の力にするなど。
「観客を利用する、なんて発想普通出てきませんよ……」
呆然とした面持ちで呟く麻耶。
同じ世界王者ではあるが、鬼一と千冬では勝負してきた数も質も大きく異なる。ISではモンドクロッソのような世界大会と複数の部門が存在するが、だがそれは3年に1度だけだ。モンドクロッソとは違う別の公式戦も存在するが、ISの歴史の浅さと相まって決して数は多くない。しかもISは女性なら乗れる、ということから勘違いを起こしやすいが実際にISに乗れる、乗ろうとするのは一部の人間である以上、競技人口も限られてくる。ISの数も限られていることから敷居が極めて高い。
それとは対照的にe-Sportsは参加するための敷居が低い。男女年齢問わず環境を用意するための初期費用、もしくは実際にプレイするためには料金があれば誰でも出来る。という手軽さもそうだがプロゲーマーの普及に伴って競技人口が爆発的に増えた今、数多くの世界大会が存在するし、性別も年齢も関係ないから様々な人間がいる。世界各地を転戦していた鬼一は、1つの大会に参加するたびに環境に振り回されその国ならではの特色に苦しめられたことは1度や2度ではない。そんなハンデ
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