9話 一夏戦
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これは白式の本質に当たらずとも遠からずであり、鬼一の読みは間違ってはいなかった。
ただ、鬼一の予想を超える代物であった。
その本質、『零落白夜』を。
ブリュンヒルデ織斑 千冬が使っていた最強にしてISにとって最悪の単一仕様能力。機体を守るシールドバリアーを直接突破し、操縦者を守る絶対防御を強制的に使わせエネルギーを一瞬で削り切る、という悪夢めいた能力。
この能力は第1の壁であるシールドバリアーによる防御判定を『ないもの』とし、そして第2の壁である絶対防御、通常ならIS側で判断される致命傷判定さえも『ないもの』とする。従って強制的に絶対防御を発動させてエネルギーを削るということだ。
極端な話、1の力でシールドバリアーを破壊して絶対防御が発生しないなら10のダメージ。そして1の力で絶対防御を発動させたら100や200のエネルギーを吹き飛ばすと考えたらイメージしやすい。絶対防御に使われるエネルギーは極めて大きいのだ。
零落白夜はこの後者に値する代物だ。他と違うのは1の力で相手の残ってるエネルギーを全て吹き飛ばすという点だが。
鬼一自身も零落白夜の存在は知っている。世界王者の織斑 千冬もこの技を使っていたのだから公式記録を見れば分かる。だが鬼一はこの存在を白式から除外した。
なぜならこれは『ISが操縦者と最高状態の相性になったときに、自動で発生する固有の能力』だからだ。一夏はISに乗り始めて日が極めて浅い。故に鬼一はこんなチートめいた能力が持っているはずがないと踏んだ。
つまり鬼一は1度答えに触れながらそこから遠のいてしまったのだ。
無論今回出した結論が完璧に正しいとは鬼一自身も思っていない。根本的に情報が少ない以上、断定など出来るはずもないのだ。
―――決め付けることは出来ないけど、でも、近接戦闘は極めて危険。ならどうやって押さえきるかが勝敗のキモになるな……互いに致命傷を負わせることは難しいから長期戦になりそうだ。だけど……。
答えが分からない以上に鬼一には大きな懸念があった。それは、自身の状態であった。
昨日のセシリア戦で発生した疲労がまだ大きく残っていたのだ。身体を少し動かせば軋むような感じがあり、痛みもある。なによりただ全身が重くて思うように動いてくれない。
―――かなり疲労が残っている状態で、大きな負担になるISによる戦闘。僕の調子を考えるなら短期戦がベストになるけど、純粋近接型に対してそれは敗北覚悟のリスクを背負うことになる。
白式の正体さえ分かれば長期戦だろうが短期戦だろうがそれがベストなら鬼一は決断することが出来る。だが、それができない以上鬼一に出来ることは少ない。すなわち、
―――負担を減らしながら様子見しかないか。
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