9話 一夏戦
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―――キイチ、のことですか?
―――はい。国別対抗戦で名試合を演じた、レイアン選手に語っていただければと思います。
―――……そうですね。7本先取という長丁場の戦いは、体力や技術、特にメンタルがモロに影響されます。劣勢に追い込まれて苦しい状態でメンタルを維持するのは、困難です。あの時は0-6という、キイチは絶対的な不利だった。
―――そこから鬼一選手は驚異的な追い上げを見せましたね。連続で6本取り返すという神業を見せました。
―――……ワタシが6本奪った時、キイチはまるで別人に切り替わった。比喩でもなんでもなく、まさしく別人に変わりました。
―――具体的には、どのように?
―――キイチは戦略、戦術の構築が極めて巧みなプレイヤーです。様々な情報から対策を作り上げますが、その精度も年齢を考えれば素晴らしいものです。ですが、あれは……。
―――あれは?
―――先ほどのワタシの発言ですが、言い換えればキイチはリスクリターンの値を理性で考えていることでもあるんです。ですが、ワタシが戦ったキイチはそんなものとは無縁の戦いでした。
―――と、いうと?
―――冷静な計算の上に、ミスを恐れない、極端なことを言えば何があっても負けない、負けるくらいなら死んだほうがマシという、捨て身の精神を持っていたのです。
―――捨て身の精神、ですか。
―――使えるものは使い、自分の全てを燃やし尽くして全力でそれをぶつけてくる、ということです。ワタシは全力で捨て身の攻撃を凌ぎきった。勝ったあとで心底こう思いましたよ。『殺されるかもしれない』、と。
―――国別対抗戦 決勝戦終了後 フランス代表 レイアン選手 インタビューより一部抜粋
――――――――――――
更衣室で黒が基調の赤ラインが入ったISスーツに着替えながら鬼一は情報を整理する。
昨日、一夏が駆る白式の情報を探り、対策の構築を急いでいたが鬼一は組み立てることが出来なかった。その理由は―――。
―――白式にはなにか『武装』以外に何か大きな秘密があるんじゃないのか?
という疑問が鬼一の心を占める。これが原因で鬼一は決断を下すことが出来ないでいた。
冷静に考えれば考えるほど白式はおかしいと鬼一は考えていた。確かに白式は凄まじいの一言に尽きるカタログスペックを誇っており、鬼神と比較しても速度や単純な出力(パワー)では上回っている。操縦者の技量しだいでは現行ISの中でも指折りといってもいいだろう。
だが、驚異的なスペックを誇っていながらもそれに対して、装備は近接ブレード『雪片弐型』しか搭載されていないことが大きな違和感を持たせていた。装備が一つしかないというのに第3世代ISを冠するには些か役不
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