第六話 譲れないもの
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?いったい何を考えているの?上昇力では九六艦戦は烈風の敵ではないのに。」
紀伊は一瞬眉をひそめた。
「これは・・・・罠?それとも・・・・。」
紀伊は迷っていた。このまま逃げ切れば数の上で優っている自分の勝利は動かない。だが、それでいいのか?紀伊は自問自答して首を振った。
「たとえ負けるにしても全力で戦えば後悔はしない。でも・・・・時間稼ぎという勝ち方をすれば一生私は後悔する。鳳翔さんに応えるためにも・・・・みんなに応えるためにも・・・・・私はこの勝負に応じ、全力で最後まで戦います!」
紀伊は烈風隊に全力を挙げての追撃を指令した。上昇する九六艦戦を烈風隊はぐんぐん縮めてくる。
「射程に捕えた・・・撃て!!」
紀伊が叫んだ。
「今です!!」
鳳翔が叫ぶのと同時にふっと九六艦戦が力を抜いたように不意に上昇をゆるめ、次の瞬間急激に落下していった。瞬間的にエンジンを極限まで落としたのだ。
「えっ!?」
紀伊が一瞬呆然とする。急なことなので烈風隊は対応できず、九六艦戦を避けるようにしてとびぬけていった。そんな中、九六艦戦は落下しながら烈風隊をすり抜けて背後に回りながら猛烈な機銃を浴びせかけた。
「しまった・・・・・っ!!」
紀伊が唇をかんだときには、烈風隊のうち3機が撃墜判定を下されていた。だが、その中の一機は撃墜されながらも反転して、背後の九六艦戦を1機体当たりで撃ち落としていた。その直後――。
「そこまでです!!」
赤城の声と共に、演習終了の笛の音が響き渡った。
残存機数は鳳翔が5機、そして紀伊も5機。つまり―――。
「引き分け・・・・。」
加賀がつぶやいた。
紀伊は呆然と立っていた。
「引き分け・・・・うそ・・・・絶対に負けたと思っていたのに・・・・・。」
最後の最後で自分の烈風隊の一機が相打ち覚悟で敵機に体当たりしたのだ。それがなければ、自分は負けていた。体当たりした機は主翼を傷つけられていた。フラフラとだが、それでも誇らしげに飛んでいる。
「やった!!」
耳元で大きな声がして、ぎゅっと背後から肩を抱かれた。
「やったじゃない!!あの鳳翔さんを相手に引き分けに持ち込めるなんて、本当にすごいわ!!」
紀伊から体を離した瑞鶴が紀伊の両手をぎゅっと握りしめて振った。
「ええ!流石です。良かった・・・・本当によかった・・・・!」
そばに翔鶴も来て嬉しそうにうなずいている。
「いいえ、皆さんのおかげでした。私は・・・・。」
「またそういう。駄目よ、その言葉は今は言わないで。」
瑞鶴が遮った。
「ほら、艦載機が帰ってくるよ。あの子たちを労わなくちゃね。」
瑞鶴の言葉に紀伊は慌てて飛行甲板を水平に立て直した。
「本当に・・・本当に・・・ありがとう。そして、お疲れ様。」
紀伊は戻ってくる艦
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