第六話 譲れないもの
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していた残りの烈風隊が反転し、再び猛速度で敵に襲い掛かってきた。旋回性能が劣るといっても距離が開いているので余裕がある。強力な20ミリ機関銃の前に何機かの九六艦戦が赤城と翔鶴の笛、そして二人の旗によって撃墜判定を受けた。埠頭からは一斉に歓声が上がる。だが、混戦になると九六艦戦も強さを発揮した。持ち前の粘り強さと旋回性能、そして組織力でじわじわと烈風隊の背後を取っていく。ドッグファイトの訓練と数機が一体となってフォーメーションで敵を翻弄する腕にかけては紀伊は鳳翔に到底かなわなかった。当人もそれを良く知っている。
「海面すれすれに急降下!!敵を引き離して!!」
紀伊が叫んだ。烈風隊のうち何機か撃墜されたが、残る機は急速降下して海面すれすれを飛行し始めた。これを追う九六艦戦の背後から猛烈な機銃音がした。一旦太陽に隠れて上空に退避していた第一、第二小隊が反転して突入、敵を挟撃したのだ。次々と九六艦戦は撃墜の判定を受けて散っていく。だが、混戦になれば鳳翔の九六艦戦に圧倒的に有利だ。距離があるうちに何とかたたきたい。
(お願い!!これが最後の最大のチャンス!!一機残らず撃ち落として!!)
紀伊は祈るような思いで戦況を見つめていた。
「先日の演習とは大違い。さすがは紀伊さん。相当の練習を重ねてきましたね・・・・。」
鳳翔は上空を見上げながらつぶやいた。
「紀伊さんは九六艦戦の弱点を的確に見抜いています。いいえ、それだけじゃありません。自部隊の烈風隊の弱点と長所も冷静にとらえたうえで、それらを最大限に戦術に活かしている。」
鳳翔は補佐役の正規空母に目を転じた。
「どう思いますか、加賀さん。」
「・・・・・・・。」
加賀は黙って上空の空中戦を見上げたままだった。
「これで充分ではないでしょうか。少なくとも私は彼女の力を見届けることができました。これならば今度の作戦に編入しても問題はないでしょう。」
「・・・・・・。」
加賀は無言だった。鳳翔は加賀から視線を外し、空中の残存九六艦戦に対して、急反転し、追尾してくる烈風隊を狙うように指示した。散開した九六艦戦は突っ込んできた烈風隊の背後を襲い、次々と撃破していく。だが、紀伊も負けてはいなかった。先行する烈風隊を反転させて、加勢させ、ここに大激戦が展開された。当初からは考えられない紀伊の粘り強さに鳳翔もいつの間にか顔を引き締めている。
その時、カウントダウンが残り1分を切った笛の音が響いた。
「残り1分です!!残存機は鳳翔九六艦戦隊が6機、紀伊烈風隊が8機です!!」
赤城が叫んだ。なっ、と加賀が小さく声を漏らしたのが鳳翔の耳に届いた。
「流石です。でも、まだこれからです。紀伊さん!」
鳳翔が叫び、ぎゅっとこぶしを握りしめた。一旦混戦から抜け出した九六艦戦が上昇を始めた。
「上昇・・・
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