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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第六話 譲れないもの
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(この人が赤城さん・・・・。)
紀伊は赤城を見た。凛としたたたずまいはさすがに精鋭中の精鋭を率いる第一航空戦隊旗艦を務めるだけはある。赤城は鳳翔を見て、次に紀伊を見たが、ふとかすかに微笑みかけたような気がした。紀伊がいぶかしげに思うより早く赤城は元の主審たる表情に戻っていた。
「副審は私、翔鶴が務めさせていただきます。」
翔鶴が一礼した。
「では、ルールを説明します。各々が20機ずつ戦闘機を発艦させ、10分経過した時点での残数が多いほうか、どちらかを全滅させた方を勝ちとします。」
紀伊も鳳翔も同時にうなずいた。
「では、両者位置についてください。」
その言葉に鳳翔は沖合に、紀伊は埠頭付近に離れていった。それを見届けた赤城がさっと右腕を上げた。右手に持った判定用手旗が風になびいている。埠頭に集まった艦娘たちはしんとなり、すべての眼が赤城に集中された。
「行きます!演習・・・・開始!!」
右腕が振り降ろされた。

 紀伊は数歩滑るように後退し、右腕の飛行甲板を水平にすると叫んだ。
「艦載機、発艦開始!!」
飛行甲板から次々に飛び立った烈風隊は上空で横一列の編隊を組んだ。同時に鳳翔の九六艦戦も迎撃のために横一陣に展開して殺到してきた。
「・・・・・・・。」
紀伊は注意深く各隊の動きを目で追った。やがて烈風隊は射程距離にはいる。
「全機、攻撃開始!!」
紀伊が叫んだ。同時に烈風の誇る20ミリ4型機銃が一斉に火を噴き、九六艦戦は上下左右に分かれた。
「よし、烈風隊全機!!そのまま直進!!すり抜けて!!」
紀伊が叫んだ。そばにいた瑞鶴は思わずえっと声を上げていた。通常ならこのまま混戦に持ち込み、後は機同士のたたき合いになる。だが、紀伊はそうせずに烈風隊を直進させ、敵を突き抜けさせようとしている。
「全速力で突破!!」
烈風隊は最大戦闘速度で九六艦戦を突破し、後方にすり抜けた。これには九六艦戦も慌てたらしく、持ち前の旋回性能で反転し、追撃にかかった。だが、烈風の高速は九六艦戦を寄せ付けず、ぐんぐんと差を広げていく。
「第一小隊、第二小隊、上昇!!」
烈風隊の一隊が太陽に向けて急速に上昇していった。九六艦戦の半数もこれを追尾するが、上昇力において強力なエンジンを積んでいる烈風隊にはかなわなかった。追尾してくる旧六観戦の7,7ミリ機銃が火を噴くが、太陽に目がくらんで、標的をうまくとらえられないらしく、誰も撃墜されていない。
「旋回性能ではこっちが負けます・・・・。でも、逆にこっちに有利な点は確かにあります。大切なのは・・・欠点と長所を知ってそれを最大限に生かすことを考えること・・・・!!そうですよね、霧島さん!!」
紀伊の言葉は観戦中の霧島に届いたかどうか、それは誰にもわからない。
「反転し、迎撃!!」
紀伊の叫びに先行
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