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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第六話 譲れないもの
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して皆さんのお世話になって、色々教えてもらって少しずつ前を向いて歩けるようになりました。私は卑屈だなんて言われたくはない。こんなところで私は終わりたくはない!!」
紀伊の気迫に瑞鶴は言葉を失った。紀伊自身が驚いていた。今までこんなに大声を出したことはなかったからだ。でも、それによって自分の心にかぶさっていた重苦しい重しが吹き飛んだのも事実だった。紀伊は決意していた。
「大声出して、ごめんなさい・・・・。でも、やっと決心がつきました。このままじゃ私は駄目な艦娘になってしまう。鳳翔さんに負けたことを引きずっていては前に進めないんです。だから・・・・もう一度だけ、鳳翔さんに挑みます。」
皆は一斉に紀伊を見た。
「よく言った!」
利根がパンと紀伊の肩を叩いた。
「でも、どうするの?今の状態じゃまた負けるかも・・・・。それに鳳翔さんが受けてくれるかどうか・・・・・。」
鈴谷が心配顔で言う。
「今から練習に行きます。いいえ、私一人でやります。皆様にはこれまで色々お世話になりました。でも、これは私が自力で解決しなくてはならない問題なんです。それに、鳳翔さんならきっと受けてくれます。駄目だったら土下座してでも頼み込みます。」
「紀伊・・・・・。」
「紀伊さん・・・。」
6人の艦娘たちは紀伊の言葉に目を見張った。これまでずっと引っ込み思案で過剰なネガティブ思考とさえ思っていた新参者からこんな言葉を聞こうとは夢にも思っていなかったからだ。


 執務室にて、夜、窓の外を眺めながらの提督のモノローグ――。
 まったくとんでもないことになっちまった。

紀伊の奴の護衛艦隊の編入に日向と加賀の奴が猛反対し、話が振出しに戻ったのだ。俺は鳳翔、加賀、日向、榛名、霧島、伊勢、ビスマルクを呼んで夜遅くまで話し合った。加賀と日向を除く5人は紀伊の奴の編入を歓迎した。だが、奴らは鉄壁のごとく紀伊の編入に対して反対の姿勢を貫いた。なぜ奴らはかたくなに反対するんだろう。女の、いや、艦娘心は複雑なのかもしれん。
 実を言うと、この会議の小休止中に翔鶴が知らせてきた知らせが俺の興味と決断を生ませた。奴は鳳翔に負けたことをそのままにせず、一念発起して自主練を始めたのだという。しかも「土下座してでも頼み込みます。」という不退転の台詞まで言ったのだという。今までの奴の言動からは考えられなかったことだ。

 奴は少しずつ変わり始めている。

それがいい方向に行くか、悪い方向に行くかはまだわからないが、俺がそれを最後まで見届けたい。よって、加賀や日向の奴の意見を聞こうという思いは毛ほどにもない。だが、皆を納得させるためにはそれなりの事実が必要だ。特に加賀や日向の奴には。そこで俺は紛糾する会議に戻り、一つの提案をした。つまり紀伊と鳳翔にもう一度演習をさせる。そこで紀伊が負
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