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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第六話 譲れないもの
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その意図で紀伊に話しかけたのだろう。
「紀伊さん。」
翔鶴がこっちを見ている。不安そうな顔だったが、眼は真剣だった。
「不安な気持ちはわかりますが、私も、受けられた方がいいと思います。」
翔鶴がそういうということは彼女もまた鳳翔の意図をくみ取ったということだ。紀伊は決断した。
「翔鶴さん・・・。わかりました。お受けします。お願いします!」
紀伊は頭を下げた。
「ありがとう。では、ルールを説明します。私と紀伊さんとで戦闘機を20機ずつ放ちます。10分経過するか、どちらかが戦闘不能と判定されるまで戦い続け、より多くの艦載機を撃破したほうを勝ちとします。よろしいですか?」
「はい。」
紀伊はうなずいた。
「撃墜の判定は、翔鶴さん、あなたにおねがいしてよろしいですか?」
「はい。」
翔鶴はうなずき、交互に視線を送ると、二人から離れていった。
「では、始めましょう。」
鳳翔はそういうと、滑るようにして沖合に出ていった。ほぼ数キロを隔てたところで二人は向かい合った。鳳翔がかすかに海上に点となって漂っているのがかろうじて見える。
(鳳翔さんの戦闘機はおそらく九六艦戦・・・・それに対してこっちは烈風。速度、火力、耐久性。性能から行けば、圧倒的にこっちの方が有利だけれど・・・・。でも、相手はあの鳳翔さんの艦載機・・・・太刀打ちできるかどうか・・・・。)
紀伊は湧き上がる不安を抑えきれなかった。
「お二人とも準備はいいですか?」
翔鶴の声が風に乗って届いた。正確には無線を使用しているのだが。彼女は右腕を上げている。紀伊は鳳翔がうなずくのを見、自分もうなずいた。
「では、演習、開始です!!」
右腕が振り下ろされた。
(でも、やるしかないわ!!みんなお願い!!)
紀伊は飛行甲板を水平にし、叫んだ。
「戦闘機烈風隊、発艦開始!!横一列陣形のまま突撃!!」
放たれた艦載機は多少ばらつきがあったが、何とか横一列に陣形を整えた。その瞬間彼方から九六艦戦の白い機体がまっしぐらに烈風隊に向けて突撃してきた。
「攻撃開始!!撃て!!」
紀伊が叫んだ。烈風隊の九九式20ミリ機関銃が一斉に火を噴く。だが、九六艦戦は撃たない。いったん戦列を崩し、上下に逃げるようにして旋回していく。烈風隊はその中を突っ込んで散らしていった。
「乱戦よ。撃ち負けないで!」
紀伊が叫んだが、次第に顔色を失っていった。
「どうして?どうして?!・・・・どうして?!」
いったん上下に退避した九六艦戦を烈風隊が追撃したが、速度が倍近く違うため、九六観戦をたやすく追い抜いてしまう。そのため速度調整のために間合いを取ろうとするのだが、それに手間取り、いつの間にか後ろに回り込んだ別の九六艦戦に次々と燃料タンクを集中的に攻撃され、撃墜判定を受けてしまったのだ。それのみならず、九
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