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第二十二話その2 皇帝陛下の憂鬱な日々なのです。
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をあれはさぞ恨んでいるやもしれぬ。どこぞに亡命し、やがては余を虐げるかもしれぬ。そうなっても余は構わぬと思っておるがの」
「陛下・・・!!」
宮内尚書は次々と吐き出される言葉に耳をふさぎたかった。それが激烈な調子で有ればいっそよかった。だが、皇帝陛下は日ごろ臣下に言葉を賜る時と全く同じ調子で話していただけにその心中のほどが痛いほど伝わってきてしまったのだ。
「ケルリッヒよ。余はカロリーネはおろかこの帝都に住まう者であっても手を差し出すことはできぬ身。シュザンナのことはそちの良きようにせよ」
「では、せめてお手紙を・・・・」
皇帝陛下は瞑目したまま、首を振った。手紙を書いてしまえばまたそこで情が移ってしまう上、何かの時に悪用されかねない。焼き捨ててくれるように頼めばいいのだが、あのベーネミュンデ侯爵夫人のことだ、きっと取っておくのだろう。そう思われたに違いないとケルリッヒは察した。
「・・・・・・」
もはやこれ以上話すこともないと悟ったケルリッヒは立ち上がって深々と一礼し、東屋を後にした。黙然と座り込んでいる皇帝陛下を残して。
彼は次にもっともっと不快になるであろう会見に臨むべく、宮廷を後にしたのであった。
それからしばらくして。帝都オーディン郊外 ベーネミュンデ侯爵夫人邸――。
昼間だというのに、赤い分厚い遮光カーテンを仕切られたその居間には豪華な調度品が室内のろうそくなどの明かりに照らされて鈍く輝いている。豪奢なソファには切り裂かれた絹のクッションが羽をまき散らしてぐったりと置かれており、床の上にはワイングラスの破片が血のような赤と共に広がっている。
その中をまるで獣のように行ったり来たりしながら、シュザンナことベーネミュンデ侯爵夫人は先ほどの会見を思い出して腸を煮えくり返らせていた。この発作が長時間続くと彼女はしまいには意識を失って昏倒してしまうのだが、それでも、湧き上がる怒りを抑えることはできなくなっていたのだ。
「おのれ・・・」
まだ30になったかならない年頃の彼女の顔は鬼気迫る形相で有った。
「おのれおのれおのれ!!!!」
彼女は不意に暖炉の上にあった青磁のツボをひっつかむと、暖炉の中に両手でスローインをするようにして投げ込んだ。バリン!!という音とともに、ツボは四散し、火の気のない暖炉の中にその破片をまき散らした。
「ケルリッヒめ・・・妾を愚弄するか!!??」
ベーネミュンデ侯爵夫人は唇をかみしめんばかりにしてわなわなと震わせていた。
「それもこれもあの女のせいじゃ!!陛下はあの女にすっかりたぶらかされてしもうたのじゃ!!」
再び、彼女はツボをつかみしめ、それを投げようとしたが、不意にその手が止まった。ドア
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