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第二十二話その2 皇帝陛下の憂鬱な日々なのです。
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のこれと言って突出した能のない男であったが、その凡庸さゆえに、平素の典礼を滞りなくきりまわしていた。近年宮内尚書が立て続けに交代するので、それを選任する側としては、凡庸ながらも大過なく職務をこなす者を選んできたのだった。

 そのケルリッヒが皇帝陛下の前であまり血色の良くない顔をことさら悪くして話している。彼は凡庸だったが、宮中の噂の広まり方については散々身に染みて知っているため、侍従たちを遠ざけていた。その侍従たちにしても日頃から腹心と頼んでいる者ばかりを今日の当番にしておいたのである。
この時、彼はベーネミュンデ侯爵夫人から頼みごとをされ、それを携えて皇帝陛下の下にやってきたのであった。本来であればそう言ったことはしたくはないのだが、あまりにも執拗かつ脅迫的な頼みであったため、ついに腰を上げてしまったのである。

「臣がこのようなことを申し上げるのははばかりあることと思いますが、皇帝陛下におかれましては、ベーネミュンデ侯爵夫人にご配慮をいただきとうございます・・・」

 フリードリヒ4世はそれに答えず、カップから一口お茶を飲んだ。

「グリューネワルト伯爵夫人をご寵愛なさることに関し、臣は反対を申し上げているのではありません。あの方もまた美しく、何よりも聡明な方であり、決して国政に口を出さない方であらせられます。ですが・・・・・」
「ケルリッヒよ」
「ははっ」

 宮内尚書は頭を下げた。

「余とシュザンナとの間の子で、身罷った者は幾人おったかの?」
「は!?」

 とっさのことにケルリッヒは思わず身をすくめたが、正確に「3人おられました」と答えた。

「そうじゃの。あれは3度流産、死産を繰り返した。これ以上負担をかけるには忍びない」
「ですが、皇帝陛下におかれましては、ベーネミュンデ侯爵夫人のもとにお渡りあそばすことはできるはずでは・・・・」

 フリードリヒ4世はかすかだが憂いを帯びた息を吐いた。

「宮内尚書、そうなればあれに情が移り、また子をなすやもしれぬ。そうなれば今度は子だけで済むじゃろうかの」

 皇帝陛下が言わんとしていることを察知したケルリッヒは頭を下げた。

「残念ながら余は周りの者を不幸にする体質を持っておると見える。皇太子は先年病で死去した。そしてカロリーネも・・・・」

 皇帝陛下の瞼が一瞬震えた様にケルリッヒは感じた。

「カロリーネのことは余は一時たりとも忘れたことはない。ケルリッヒよ。余は自身では何一つできぬ人形なのじゃ。誰かに操られ、初めてその体を意味成すことに使える人形じゃの」
「陛下!!」

 とんでもない話の糸口をほどいてしまったとケルリッヒは後悔したが、もうおっつかなかった。

「あれが逃亡したと聞いて余は安堵した。手出し一つしなかった余
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