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恋姫†袁紹♂伝
第43話
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 拡声器を使っていないにも関わらず凄い声量だ。
 その場にいた全員は、心の奥を身体ごと震わされた。

 ありえない事が起きている。

 どこの国に、始めての王命が生殺与奪の譲渡である王が居るのだろうか。
 それも古株ではない、新参者に短刀を託した。
 大陸広し、いや、世界広しと言えど袁本初ただ一人だろう。

「董 仲穎、真名は月です。今この時より袁紹様に帰順致します」

 確信を得た。これ以上の問答など無意味だ。
 量るには彼の器は大きすぎる。自分とは比較にならないほどの王者だ。

「賈 文和、真名は詠よ。主である董卓と共に忠誠を誓うわ」

「ただの華雄だ、真名は無い。私の戦斧で袁陽の障害を退けて見せよう」

 勝鬨のような歓声が起きた。
 新たな国、新たな王、新たな同士、骨を折るには十分な目標。
 歴史的な瞬間だ。この場に居る全員が忘れることは無いだろう。

「我が背に続け! その道こそが理想に近づく一番の近道である!!」

 皆の興奮は最高潮に達した。新参者である董卓達も高揚している。
 しかし、袁紹が次に放った一言で――



「手始めに幽州を獲る」


 何度目かわからない閑寂が訪れた。










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