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俺の四畳半が最近安らげない件
血のバレンタイン 〜小さいおじさんシリーズ7
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「ほう、東南の風」
端正が鼻で笑う。
「して、その目的は…これだな」
すっと翳された端正の小さな掌には『火』の一文字。同時に翳された白頭巾の掌にも『火』。白頭巾は、にやりと笑って手を下げた。
「流石。分かっておられる」
ちょっ…何?どういうこと!?俺のゴディバに何する気!?
「彼が『追跡』を恐れて鞄を掛けた天井近くの鈎。あの場所は」
羽扇を口元にあて、奴は密やかに笑った。


「エアコンの風が、直に当たる場所なのですよ……」


げっ!!!こ、こ、こいつ…なんか暑いと思ったら……!!!
「温度は最大に設定してあります。高級チョコレートは熱に弱い…半刻も経てばドロドロでしょうな」
リモコンは、リモコンは何処だ!?
「――私が、何故姿を隠していたのか。そしてこの私が、容易に見つかるような場所にリモコンを置くか否か」


―――もうあったま来た、じゃあコンセント引っこ抜いてやる!!!


あえてドスドス足を踏み鳴らしてエアコンに近づくと、端正が胸元から何かを取り出し、口に咥えた。


―――馬笛!!!
あンの野郎、エアコンに近付いたら呂布呼ぶぞってことか!!鞄も……か。そうか、俺は…俺は…。
「―――分かったから。もうやめて」






「実につまらん!赤子の手をひねるようだ、余興にもならんわ!!」
豪勢がぶつくさ文句を言いながら、しかし実に旨そうに俺のゴディバを頬張る。12粒しかないやつを2粒も足元に確保してだ。
「うむ…何というか…弱いもの虐めをしてしまったようで、寝覚めが悪い」
端正が申し訳なさそうにプラリネ入りのやつを齧る。でもやはり2粒確保して紙に包んで置いてある。
「戦の勝敗は、始まる前から決まっている。えてしてそういうものなのですよ…」
白頭巾は淡々とホワイトチョコレートを齧る。珍しく羽扇を傍らに置いている。
「メディアによる情報収集」
食い入るようにゴディバのコマーシャル見てたな、こいつは。
「そして通信ツールを用いての、成りすましによる情報操作」
そんなことしてたのかこいつ!?俺は慌ててLINEを立ち上げる。一週間前くらいまでのトークをスクロールすると、覚えのないトークのやり取りを見つけた。


―――お、俺がさりげなくゴディバを要求してる!!しかも3倍返し確約してる!!!


しかもその後、何気ないトークで証拠を隠滅している。いかにも俺が彼女に送りそうなトークで……俺がゴディバを貰った時点で既に奴らの奸計に嵌っていたのか…思わず、椅子から崩れ落ちた。
「1週間もあれば『彼』が普段使わない鈎の場所を気づかれない程度に動かす方法などいくらでもあります」
「ま、そういうことだな。つまり」
豪勢が早くも一粒平らげ、苦めに淹れた茶を啜った
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