48.金狼
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うな………口惜しいのう、儂では役者不足じゃったわい」
「オーネストは何が何でも大人の意志には添おうとしない。大人に支配されるのが嫌なんだ。本質的には子供の発想だけど、その考えをオーネストは貫き通せてしまう。だから彼は不幸なんだ。弱音を吐いて誰かに甘えることを、自分自身が絶対に許さないから………哀しいな、彼は死ぬまで戦い続ける覚悟を決めているんだ」
大人だからなのか、それとも私が子供だからなのか、大人たちは口を揃えてオーネストに同情的だった。しかし、オーネストは同情されるのも嫌いだし、アイズにとっての大人となる人間が周囲に殆どいなかった。
ふと、何故オーネストには親がいないのだろうと思った。
アイズも親はいない。最初からいなかった訳ではなく、両親との思い出もあるが、もういないのだ。自暴自棄になったようにダンジョンに突入して出鱈目に暴れたこともある。大人たちを信頼してはいるが、今でも無茶をしてしまう事がある。
前に聞いた話では、オーネストがオーネストと名乗り始めたのは10歳の頃。もしかしたら、それ以前には彼には親のような存在がいたのかもしれない。そしてそれがいなくなって、暴れているのかもしれない。
(私とオーネストは、似てる………?)
髪の色と目の色は殆ど一緒だ。顔立ちも少し似ていると言われたことがある。もしアイズの想像と同じなら、もしかしたら境遇も似ているのかもしれない。なのに、オーネストとアイズはどうしてここまで離れてしまっているのだろう。
同時に、自分もどこかで何かを掛け違えたらオーネストになっていたのではないかと思うと、アイズは怖くなるのだ。
自分の心のどこかにも、金色の化け物が潜んでいるのかもしれない――と。
「アイズ!アイズ、大変だよ!!」
「え、何が……?」
数日前の出来事を反芻していたアイズは、ティオナの突然の言葉に思考を中断させた。
ロキ・ファミリアは現在ダンジョン50階層に到達した所だ。今日は一休みして、明日から下に本格的に足を踏み入れる予定なので、現在は休憩中だった。
しかし、その静寂を破ったティオナの口から出たのは、奇しくもアイズが考えていた男の話だった。
「オーネストが!!オーネストが……アズたちと一緒に黒竜と戦いに行ったって!!」
「……………ッ!?」
時代のうねりは、多くの存在を巻き添えにして、たった一つの方角へと突き進む。
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