第8話
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リィの説明を聞いて驚いたロイドはすぐに気を取り直して考え込んだ。
「ええ、トップが2人いた場合、どちらかが改革を起こそうとしてももう片方が必ず足を引っ張る……これはもう、政治力学としてそうなるのが歴史の必然なのよね。70年前……帝国・共和国双方の承認を受けて創設されたクロスベル自治州……その時、自治州法を定めたのは両国の法律家だったそうだけど……今にして思うと、まさに”呪い”ね。」
「………………………」
「私は……途方にくれてしまった。政治の世界にそのまま入れば、その呪いに必ず蝕まれてしまう………だから、父とも祖父とも違う別の切り口が欲しかった。」
「それが……警察だったのか。」
「ええ、政治とは別の視点で様々な歪みが観察できる場所。そこでの経緯は、いずれ政治の世界に入った時の武器になると思った。父が失敗し、祖父がなし得なかったクロスベルの改革………それを実現する手掛かりになるんじゃないかと思ったの。」
「そうか………」
「……でも、やっぱりそれはただの逃げだったのかもしれない。今日、あった出来事は、どれも予想の範囲内だったけど……想像以上に重たく、冷たかった。それを突き付けられて……またしても途方にくれてしまった。結局私は……自分一人で何もなし得ないのかもしれない。父と母に見捨てられた……幼い少女のままなのかもしれない。」
「………………………」
複雑そうな表情で呟いたエリィの言葉を聞いたロイドは黙ってエリィを見つめた後
「―――それで、いいじゃないか。」
「……え………」
静かな笑みを浮かべてエリィを呆けさせた。
「エリィはさ、完璧すぎるんだよ。全て自分が、一度も失敗しないでやり遂げる必要がある……そんな風に思っているんじゃないか?」
「そ……そんな事は………」
「……確かに今日は色々とヘコまされることが多かった。でも、そんなのは働いていれば当たり前の事なんだ。そして……今日乗り越えられなかった”壁”は明日には乗り越えられるかもしれない。」
「”壁”………」
「この場合の”壁”ってのは脅迫状の事件のことだ。一課が出張って、俺達の手を離れかけているこの事件………できれば一課とは別に独自に動いて追ってみたい。」
「ええっ………!?で、でもこれ以上、私達ができる事なんて………」
ロイドの決意を知って驚いたエリィだったがすぐに不安そうな表情で弱音を口にした。
「一課は一課で大したものかもしれないけど………それでも、警察の論理でしか動いていないのは確かだと思う。ひょっとしたら別の切り口で事件が追えるんじゃないか………そんな気がしてきたんだ。」
「ロイド………」
「そう、さっきエリィが言った話に似ているだろ?これで
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