第十二話 真の友人その二
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「気が動転してるさ、けれどな」
「それでもなんだ」
「御前は御前だってな」
「思うんだね」
「その気持ちが一番強い、今な」
龍馬は優花を見つつ彼に言った。
「御前は御前だよ、女の子になってもな」
「そう言うんだ」
「そう思ってるさ」
優花にだ、龍馬は本音を告げた。彼自身のそれを。
「御前は御前なんだよ、蓮見優花だろ」
「そう言われると」
「御前が女の子になってもな」
優花の言う通りだ、彼がそうなってもというのだ。
「御前は御前なんだろ、それが変わるのかよ」
「いや、僕はね」
「そうだよな、御前ってことは変わらないからな」
だからというのだ。
「御前が他の奴にならないんならな」
「同じなんだ」
「確かに女の子になるさ」
龍馬はあえて優花の現実を言った、彼が今言ったことを紛れもない真実であると確信したうえで。優花は嘘を吐かないことを知っているからこそ。
「けれど人間って心だろ」
「心で人になる」
「それ優子さんが言ってたよな」
「うん、いつも言ってるよ」
「俺の祖父ちゃんもだ」
彼が最も尊敬する彼もというのだ。
「そう言ってる、いつもな」
「あの人も」
「そうだ、例え人間の身体でも心が化けものならな」
「化けものだね」
「けれど御前が御前ならな」
「僕のままだっていうんだね」
「俺は優子さんの言葉を信じる、そしてな」
何よりもとだ、龍馬は自分の言葉に強いものを入れて言い切った。
「祖父ちゃんの言葉もなんだよ」
「心が人間なら人間で」
「御前は御前だろ、そして俺はな」
優花を見たままだ、龍馬は言い切った。
「俺は俺でな」
「龍馬も」
「そしてな」
そのうえでとだ、龍馬は言葉をさらに続けた。
「俺は御前の友達だろ」
「うん」
その通りだとだ、優花は龍馬に答えた。
「そうだよ」
「だからこの話もしてくれたよな」
「悩んだよ」
「俺に言って、か」
「正直に言うよ、龍馬がこの話を聞いてね」
「御前から逃げる、か」
「そうなるんじゃないかってね」
危惧したことをだ、優花は正直に話した。
「思ったよ、だから怖かったよ」
「そうか」
「龍馬を疑ったよ、御免」
「いや、実際俺もな」
「龍馬も?」
「今ここから逃げたいさ」
そうした気持ちがだ、確かにあるというのだ。
「全力でな、けれどな」
「その気持ち以上になんだよ」
「今言ったことを」
「俺をここにいさせてるんだよ」
「そうなんだね」
「俺は弱いんだよ」
歯軋りする様にして出した言葉だった。
「弱い人間だよ、けれどな」
「それでもなんだ」
「ああ、御前は御前でな」
「僕の友達だから」
「ここにいるんだよ」
まさにというのだ。
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