8話
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は、短針が数字の7を超えそうであった。
2試合目が終わりを告げたのは確か午後に入ってすぐであったため、かれこれ6時間前後の時間が過ぎていたことになる。
対策をまとめたノートや散らばっている用紙をまとめて整理する鬼一。鬼一は過去、対策に没頭し過ぎて片付けることを忘れて眠ることがあった。その後、あまりの惨状に怒った楯無が鬼一に物理による説教が始まった。
「流石にあんな格好で苛められるのはもうゴメンだな……」
鬼一の脳内に蘇るのは数日前の悪夢。裸エプロン(水着着用)+猫耳という進化した新たなスタイルによる襲撃は、今思い出しても悪寒が背筋に走る。イタズラっ子特有の笑みに不気味に蠢いていた両手の指を見て、神はいないと思った。
楯無の柔らかさといい匂いを思い出して顔を真っ赤に染める鬼一。
それを忘れるかのように何度も自分の頬を両手で叩く。パァンっ、と小気味よい音。
もう一度ため息をつく鬼一。
トントン、と用紙とノートをまとめる。
自室には鬼一しかおらず、楯無はまだ部屋に帰ってきていなかった。
「時間もないし急いでご飯を食べてこないと」
椅子から立ち上がり、シャツの上にパーカーを羽織る。
食堂の利用時間は6時から7時までなので、やや急ぎ目で部屋から出た。
食堂に向かう道中でキョロキョロと視線を彷徨わせるセシリアを鬼一は見つけた。
入学してから既に1週間も経っているのだ。鬼一はセシリアがただ単に道に迷ったわけではなさそうだと考える。
―――どうしよう。
鬼一自身、今セシリアに対して複雑な感情を抱いていた。
勝負を軽くし、e-Sportsの馬鹿にした人間。だがそれはきっと無知から来ていたんだと考えられるし、そもそも一夏に対して鬼一は無意識下とはいえ、侮って対策を怠っていたのだから、自分も大口は叩けなくなっている。
そして楯無から様々な話を聞きISに関する認識を改めた今、鬼一はどのようにして彼女とコミュニケーションを取ればいいのか分からなくなっていた。
視線を彷徨わせていたセシリアだったが、鬼一のことを見つけると慌てたように今来ているIS学園の制服を正す。正し終えたセシリアはゆっくりと落ち着いた動きで鬼一に近づく。
足を止めた鬼一。そんな鬼一にセシリアは鬼一の前で足を止める。
「月夜さん、只今お時間よろしいでしょうか?」
その言葉に鬼一は驚いた。言葉の内容ではなく、1週間前のような高圧的な雰囲気がなくなり、柔らかく気品さえも感じさせた。
そんなセシリアに困惑を隠せなかったが、別段断る理由もなかった。
「ええ、構いませんよ。どこかに場所を変えますか?」
流石に立ち話する雰囲気でもないと思ったのか、場所替えを提案する鬼一。
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