8話
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やってきた。
母親とは逆に父は、母の顔色ばっかりをうかがう人であった。あまりに、弱い人だった。それが今の男なんだと思った。
だけど、彼は、父とは全く違う人種の人だった。
再度、画面をスクロールさせる。
―――だが、月夜 鬼一は2度に渡る進化した。
―――死に物狂いでゲーム、競技人口2億人を誇るe-Sportsの世界に没頭し自身を磨き上げた。時には暴力事件に巻き込まれ大怪我をしても彼はe-Sportsの戦いに身を投じた。
―――12歳後半から13歳の前半、約半年で彼は第1集団まで上り詰め進化した。その頃からすでに一部では『鬼』と囁かれていた。
―――あまりにも情のないプレイスタイルからそう呼ばれたらしい。が、当時の動画や様子が分かるものはほとんど存在しない。今ほど注目されていなかったことが原因か。
―――彼なりに全力で戦い、全力でゲームに応えようとした。
―――そしてゲームもそれに応えてくれた。
―――気がつけば、彼はたくさんの人を惹きつけるほどの魅力的なプレイヤーにもう一度進化していた。彼とその周りにはいつもたくさんの仲間と笑顔があった。
―――『ゲームはいつだって戦いであり自身にとって救い』。ワールドリーグ決勝後に彼はそういった。
そこでわたくしは自分の行いを恨んだ。
彼にとってわたくしの言葉がどう響いたのか、今は分かる。
彼の痛みが。
彼の絶望が。
彼の怒りが。
わたくしの言葉は彼にとってただ無神経でトゲのある冒涜でしかなかったのだ。
あれだけの強さと集中力でないとトップを取れなかったのだ。僅か14歳でそれだけの力を身につけなければならないほど過酷な世界。
わたくしと似ているとも思った。
彼は誰よりも『救い』をゲームに求めていた。
両親の死を受け入れて進むのはのはとても苦しい。だから彼は誰よりも、それこそ想像も出来ないような痛みを伴う道を歩んだのだろう。
たくさんのものを踏みにじり、犠牲にし、彼には傷ついても欲しいものがあった。
痛みを伴う戦いだったからこそ、あれだけ勝負の世界に拘っているのが理解できた。
戦いの果てに栄誉と名誉、何者にも変えられないたくさんの仲間、それは両親を亡くした彼にとって救いになったのではないか?
彼にとっての戦いを、彼にとっての救いを、わたくしは傷つけてしまったことに、今はただ謝りたかった。
だからわたくしは―――。
――――――――――――
PCの電源を落としてため息をつく。
そこでようやく鬼一はどれだけ長い時間没頭していたことに気づいた。
「……もう7時になるんだ」
ちらりと机に置いてある時計に
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