8話
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対策には限界があった。
正直なところ僕は一夏さんを今回の試合で完全に警戒した。
訓練を行った僕よりも滑らかな動き、360度攻撃を情報があったとはいえ回避しあまつさえビットを落としたその技術。ビットを落とした時に見せたあの読みと集中力は決して侮ってはならない。
僕は舐めていたのではないか?
僕は侮っていたのではないか?
僕は勝手に弱いと決め付けていたのではないか?
壊しかねないほどの勢いで右手を机に叩きつける。痺れるような痛みが右手に走る。
僕は何様のつもりだ。僕だって挑戦者だろうが。
知ろうと思えば、篠ノ之さんとの剣道などを見ていればその片鱗に触れることだって出来ただろうが!
何が『勝負を軽くするな』だ。僕自身が愚かな真似を無意識であったとはいえ、してしまっていた。
ジャイアントキリングのことばかり気にして、足元を、周りを疎かにした僕の甘さだ。あまりのヌルさに過去の自分を殺したくなる。
熱を持った理性と心を静めるように、深く、ため息をつく。
それなら今、僕にできることはこれからの勝負、戦いの場をこれ以上汚さないために全力を尽くし、これ以上汚さないようにすることしか出来ない。1週間前に啖呵を威勢良く切った自分に殴りかかりたい。
故に僕の頭からは今日の勝利のことは無くなり、明日のことに思考を埋没させた。
――――――――――――
『試合終了。勝者、月夜 鬼一』
敗北を告げるアナウンスは、あの時の私を茫然とさせるには十分なものだった。
信じられなかった。
受け入れられなかった。
年下の男の子だと舐めてかかり、ISのことを何も知らない初心者だとバカにした。
あの模擬戦は私にとってはタダのショーでした。セシリア・オルコットの実力を、ブルーティアーズを見せつけるだけのものであり、そして男の弱さを実感して優越感に浸るものでしかなかった。
ですが試合が終わり、冷静に振り返ってみれば自分の愚かしさを痛感させるものでしかなかった。
一方的に攻めているからといって自分の展開だと考え、回避や防御されている事実から目を背け、挙げ句の果てには切り札の1つであるビット『ブルーティアーズ』のエネルギーを無意味に削るだけの意味のない行動。削るだけならいざ知らず、エネルギー残量の確認を怠ってそこにつけ込まれ、わたくしにとっての切り札である弾道型の『ブルーティアーズ』を使ってしまい、最後にはそれさえも突破され一方的に攻撃されてしまった。
彼の戦いは弱いはずの年下の男の子のものではなく、わたくしにとって感嘆を隠せないほどの努力と知恵の結晶でした。そこには才能というものとは無縁の戦いで強い力を感じさせる意思があった。
ブ
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