8話
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え?」
その言葉に思わず顔を先輩に向ける。
僕が侮っていた? 代表候補生を?
「彼女もキミと戦って思い出したんだよ」
思い出した? 何を?
「キミが全力を賭けて勝負の世界やe-Sportsを守ろうとしたように、彼女も本来、守るものがあって戦っていたことにだよ」
「……」
「代表候補生、国家代表の座を勝ち取るには激しい競争を抜けなければならない。それこそキミのいたe-Sportsにも劣らないくらいにね。
自分の守るべきものの為に、自分が欲しいものを得るために彼女はたくさんのものを犠牲にして傷つけてその座を手に入れた」
どんな形であれ戦わないと、戦ってたくさんの何かを傷つけたり、犠牲にしないと守れないものがある。得ることが出来ないものがある。もしかしたらそれだけやっても何も守れないかもしれない。
だけど、大切な何かを守るために、そして汚されないためにはいつだって守るもの以外の何かを犠牲にしないといけない。何も犠牲にしないで何かを守れるというのは、それはもう、人の所業ではないだろう。
自分の左手、手袋に包まれた指先を握る。僅かに硬いそれが証明してくれた。
それは、僕があの世界で感じた絶対にして不変の事実。
「だからこそ彼女は犠牲にしてきたものと自分の戦う理由の為に、敗北できないことを思い出したんじゃないかな」
ISという軍事兵器でその1つの世界の頂点、もしくは頂点を狙える位置、国家代表と代表候補生。
才能だけでも努力だけでも立ち入ることの出来ない世界。その中で、オルコットさんは何を信じ、何を失い、何を勝ち得てきたのか。
僕は一方的な視線で彼女を見ていたのではないか?
「確かに、観客席のあの視線は人だって壊しかねないわ。それに対して怒りを示した君の気持ちも分かる。生半可な人間だったら立て直せないと思う。それはキミの考える通りだよ。
だけど私たち、国家代表や代表候補生はそんなものに潰される程度の存在だったらもっと昔に潰れているわ」
現役の国家代表が、IS学園で『最強』の2文字を背負っている人の言葉はあまりにも重かった。
舞台は違えども、僕もまったく同じ道を歩んできたのだから理解できてしまう。
その辛さを。その苦しさを。その悲しさを。その痛さを。
そうした果てに得たものの価値の重さを。
僕は知っている。
その後、僕は生徒会の仕事があるたっちゃん先輩と別れて、自室に戻りすぐさま一夏さんとオルコットさんの動画を見始めた。机には一夏さんの動きや思考、無意識下の癖を考察するノートや用紙が散らばっている。
1日もない時間で僕は僅かな資料の中から答えを見出そうとしていた。実質、資料が今回の試合しかない以上僕が取れる
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