8話
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と思わせる。が、ビットの弱点を解明し見せたのは僕だが、だからと言ってその弱点を簡単に付けるほどISの操縦は容易ではない。しかも一夏さんは僕と違って今日まで専用機を使わず、訓練もしていないのに。よくて篠ノ之さんと剣道をしていただけだ。それで白式の武装であるブレードを使えてる説明は出来るだろうが、だからといってそれとISの性能だけで落とせるものではない。
―――天性の『才能』
確かにプロゲーマー時代にも数は限りなく少なかったが、そういう存在はいた。暴力的なまでに理不尽な存在。
何も考えず、何も理解せず、ただ感じるだけで不可能を可能にする、人知が生み出した技術や戦略を嘲笑う理外の生き物だ。
違う、今はそこじゃない。
僕は安堵していた。彼女が立て直したことに。
モニター内ではオルコットさんが滑らかな曲線で中世のアーマーを思わせるIS『白式』を纏った一夏さん相手に勝利を納めていた。
途中、一夏さんとオルコットさんが会話していたのだが、それがきっかけなのかオルコットさんの動きと思考に冴えが戻り始めた。ビットを破壊され、奥の手のミサイルも突破され頼れるのはライフルだけの状態。そこから彼女は凄まじい力で一夏さんを封じ込めた。
飛来してきた一夏さんをワンアクションで避け、脇をすり抜けていく一夏さんとは逆方向に急加速して一気に距離を取る。そこから先は一夏さんの動きを悉く読み切り、持ち前の圧倒的な射撃力で一方的に封殺した。
それは一種の芸術のようだった。
一夏さんは距離を詰めるためにスラスターを噴かすが、一夏さんの軌道を先読みし、その軌道の道中に射撃を『置いた』。その射撃に一夏さんは回避することが出来ず自分から当たりに行く形になりみるみるとシールドを削り、最後は一縷の望みをかけて突貫してきた一夏さんの一撃を舞うように避け、首筋に呼び出したナイフを突きつけて試合終了。
これが代表候補生の本来の力。
その力に驚きとちょっとの悲しさがあった。
なぜ、あれほどの力を持っていてあの時全力で戦ってくれなかったのか、全力で僕を潰しに来てくれなかったのか、そうすれば互いの全力を尽くした勝負になったのに、勝負の重さも熱も痛みも感じれたのに。それだけが重りとなって、胸の中にのしかかっていた。
隣にいるたっちゃん先輩は、予想通り、と言わんばかりに笑っていた。
「言ったでしょ鬼一くん」
その言葉に意識を現実に戻させる。
「……なぜ、彼女は立て直せたんでしょう?」
正直なところ、僕には分からなかった。
なぜ、彼女はここまで早く立て直せたのか。
「彼女がキミのことや、キミにとって戦いだったe-Sportsを舐めていたように、キミは少し代表候補生を甘く見ていたね」
「
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