8話
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ましたが、貴方のことを調べさせてもらいました」
怒りなど湧いてこない。むしろ、
「家族を亡くしても、競技人口2億人を超える競争の世界でナンバーワンを勝ち取った世界王者。わたくしも僅かしかない専用機を競争し、勝ち得て、そして今の代表候補生の座を得たので少しはイメージできます。
擦り切れるほど敗北し、そのご年齢では考えられないほどの努力をなさられたのでしょう。数え切れないほどの強敵たちを倒して、名誉や栄誉を勝ち取り言葉にできないたくさんのものを手に入れました」
その言葉を、e-Sportsを少しでも、あの世界を、馬鹿に出来るものではないと、理解してくれたことが、
「貴方にとっての『戦いであり救い』を馬鹿にしてしまい、本当に、申し訳ありませんでした」
鬼一にとってはなによりも嬉しかった。
その胸から湧き上がる喜びを表さないように押し殺しながら、セシリアに声をかける。
「……そう言っていただけてありがとうございます。僕も随分失礼なことをたくさん言って、すいませんでした」
2人揃って頭を下げる。
少しして一緒に頭を上げると目線が合い、どちらともなく笑い始める。
それからは時間も忘れて、お互いのことを話し合った。
お互いの両親のことや、お互い生きてきた世界について。
形は違えど、同じような道を歩んできた2人なのだ。
誰かに、人には話せないような複雑なものがたくさんあった。
話せば話すほど、楽しく、嬉しく、時には悲しくなった。
自分の信じるものや、自分の守りたいもの、たくさんのものを得るためにこの2人は戦いに身を委ねた。
その裏でたくさんのものを犠牲にしながらも、決して挫けるわけにはいかず走ってきたからこそ、自分たちにとって『仲間』がいてくれたことが嬉しかった。
世界も戦いの舞台も違っても、最初は食い違っても、こんな風に語り合える人がいてくれたことに、どこまでも感謝できた。
悲鳴を押し殺してきた心がちょっとだけ癒されたような気がした。
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