8話
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ば誰かが血を流していたんだし。でもそれは鬼一も私たちも一緒。
―――どういうことですか?
―――……e-Sportsの規模が大きくなった今、昔より遥かにゲームに自分の全てを賭ける人たちが増えた。
―――はい。
―――私たちは自分やこの世界の為に、そんな人たちを悉く倒してるんだよ? だからトッププレイヤーと呼ばれる人たちは、たくさんの思いを踏みにじり、傷つけ、壊してきた。時には血も流したかもしれない。大切なものを守るためにね。だからある意味、称号というのはその人の『業』を深さを表しているとも言えないかな?
―――とある編集者のテープから (名前は霞んで見えない) 一部抜粋
すぐに意識を覚ました僕はたっちゃん先輩に小さく笑われながら、なんとも言えない気まずさと恥ずかしさの中で一夏さんとオルコットさんの試合を観戦した。
僕の鼻にはティッシュが詰められている。
正直一夏さんはともかく、オルコットさんのことが心配だった。
確かに勝負を舐めていたし、散々馬鹿にもしていた。
だけど、僕に負けた彼女は負けた以上に心が傷ついたと思う。周りの反応の冷たさに。仲間だと思っていた人たちからあんな心無い反応や視線が飛んできたのだ。試合で負けたならまだメンタルの立て直しは可能だと思う。いや、彼女は代表候補生にまで上り詰めたんだ。休憩2時間もあればそれくらいは十分可能だろう。だけど、あれだけの視線を集めたんだ。心が折れても不思議ではない。ここで一夏さんに負けて、あんな視線をもう一度受けたら
彼女は立ち直れないんじゃないのか?
数の暴力というのは時として回復できない、癒せない傷跡を残しかねない。
モニターの画面がオルコットさんを映している。その顔色からは彼女がどんな心境なのか想像できない。
「……」
「セシリアちゃんのことが心配?」
モニターを見つめていた僕を見て、たっちゃん先輩が声をかけてくる。その顔に笑顔はない。
「大丈夫よ」
その声に僕は驚いたように顔を向ける。
なんで、なんで、そんなことが言えるんだ。
あの視線はそんな優しいものじゃ―――
ばさっ、と扇子を開き強い笑顔を浮かべる
勇猛精進、扇子にはそう書かれていた。
――――――――――――
多分僕の顔は驚愕の表情が張り付いていたと思う。
やはりオルコットさんは調子を、心を立て直せていなかったんだろう。『ブルーティアーズ』を展開させて戦っていたが、僕の時に比べて遥かに精彩を欠いているように見えた。
ビットを初心者である一夏さんに切り落とされたのが良い証拠だ。
だけど、僕はそれだけで片付けることも出来ないでもいた。確かに一夏さんの動きは荒いし初心者だ
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