第42話
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が行き来するほどの人口にも関わらず、物乞いや宿無しは一人も見当たらない。
警邏が隅々まで行き届いており、軽犯罪がたまに発生する程度だ。
民として生きていくにはこの上ない場所だろう。
「最後は――……。おすすめ出来んが、此処を離れて何処の地域に行くことだ」
「一つ目を聞いた限り、ボク達の腕を欲しがっていると思うのだけど……?」
「だからおすすめ出来ないと言ったであろう。だが、家臣も民も嫌と言うならこれしかあるまい」
どうやら袁紹としても不服な選択肢のようだ。
ならば最初から提示しなければいいのに……。呆れるほど公正な考え方である。
董卓達の選択を遵守すると言うのは本当のようだ。
「どれを選んでも咎めはせん、我として家臣になって欲しいが……。
仮にも連合の総大将であった我に対して思うところもあるだろう。
他二つを選んだ場合は、資金や物資など必要な物を与える」
「……詠ちゃんは」
「聞くまでも無いでしょ、ボクは月に付いて行くわ」
「えっと、華雄さんは――」
「私の主は後にも先にも月様お一人。どこまでも付いて行きます」
「へううー」
わかってはいたが、改めて正面から言われると照れるものである。
「……」
中途半端な選択は許されない。自分の選んだ道にはこの二人を巻き込む事になる。
とはいえ、董卓の心は九割決まっている。袁紹も勧めた一つ目の選択肢、家臣になる事だ。
賈駆と華雄の能力は誰よりも董卓が認めている。さんな二人を民として埋もらせるのは余りにも惜しい。
では三番目の選択肢は? ……論外だ。
袁紹の言うとおり、自分達の立場は特殊である。元相国として利用したがる輩も居れば。
敗戦の将として辱めたいと考える愚か者も居た。
今は袁紹の庇護の下、他諸侯の手が届くことは無いが、いちど南皮を離れれば彼等は容赦しないだろう。
家臣として袁紹に仕える、それが最善だ。
だが董卓には―――その選択肢を思いとどませる一割の懸念があった。
「一つ、私の願いを聞いて頂けませんか?」
「聞こう、何でも言うがいい」
「ありがとうございます。……決める前に今後の方針をお聞かせ下さい」
「む、なるほどな……」
上目遣いで袁紹を見つめる董卓。彼女は見極めたいのだ。
安心して二人の腹心を任せられる場所なのかどうか……。
董卓の言葉を受け、袁紹は彼女から周りに視線を移す。
これから放つ言葉は大きな分岐点となるものだ。袁紹達だけではない、この大陸にとっても――
袁紹は息を吸い込んで口を開いた。
「我 等 は こ れ よ り 、こ の 地 で 建 国 す る! !」
『!?』
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