第四話 何とも微妙だよ逃げ切れなかったよ
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あるらしい、赤い髪を短く刈り込んだ男前の少尉が恐る恐る声をかけてきたとき、俺は心底ほっとした気分になった。
「帝国騎士ディートリッヒ・フォン・グリルパルツァーの嫡子、アルフレット・フォン・グリルパルツァーです。若様がた、姫様がたはお付きの者にもパーティーを楽しんでくるようにとおっしゃられました。私たちだけで遊園地を楽しもうと僕らを誘ってくださったのです」
俺はさっきのまともそうな奴と二人、若君たち姫君たちをかばうように身を乗り出すと、真摯な表情を作ってあらかじめ考えておいた『事情』を説明した。身も蓋もない事実はもちろん隠蔽する。出世のためには。優秀な遺伝子を持つはずの貴族の子弟が平民もいる前で迷子になるなどあってはならない醜聞である。下手をするとそれだけでお仕置き、厳格な家なら廃嫡の話さえ持ち上がりかねない。そこを弁護してお仕置きの危機廃嫡の危機を救ったとなれば、うまくすれば若君たち姫君たちは以後俺の味方になってくれるかもしれない。あるいは事情を察した親が俺に目をかけてくれるかもしれない。そうなればマールバッハ家の縁者としてある程度の速度が約束されている出世は加速すること間違いなしだ。
「そうです。アルフレットの言うとおりです」
「分かりました。お父上お母上たちには小官が責任を持ってそうお伝えしましょう」
同じように打算を巡らせたのか、まともそうな奴が間を置かずに力説した。赤毛のいかにも生真面目そうなそいつの真剣なまなざしに同じ赤毛として心打たれたのか、少尉が力強く頷いて部下に若様姫様たちの身元を紹介するよう命令した。
事情説明した俺よりも頷いただけのこいつのほうが扱いが上か。俺は何とも複雑な気分になった。これもあのふざけた悪魔の悪意であろうか。その辺の木の上で笑い転げていたら、石の一つもぶつけてやろう。
だが残念なことに、複雑な気分を晴らす機会はやってこなかった。真剣な気持ちで丹念に探したにもかかわらず。代わりに訪れたのは、声も出なくなるような事態だった。
「ベルトラム少尉、データ出ました」
『!』
「早いな」
「こちらの若様は帝国騎士グリルパルツァー家ご嫡男、アルフレット・フォン・グリルパルツァー様、こちらは帝国騎士クナップシュタイン家ご嫡男、ブルーノ・フォン・クナップシュタイン様」
『!!!』
原作の有能キャラと出会うことはできたが…よりによって肝心な時に役に立たない、要領の悪いこいつか。しかもこの様子ではコネとしてよりも同格の相棒として付き合うことになりそうだ。
最初の一人プラス少尉の名前を聞いた瞬間俺はへたりこみたくなった。強烈な衝動に耐え得たのは我ながら自賛したくなる精神力だ。
そしてアルノルトと原作の相棒のお守り役を連れてきた兵士の口から大尉の名前を聞いた瞬間、俺の精神の機能は完全に凍
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