第四話 何とも微妙だよ逃げ切れなかったよ
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げにしていた俺と同年輩の明るい金髪の少年にアップルサイダーを取ってやりと動き回って、名前と顔を売り込む。まるで選挙期間中の泡沫候補、当選ぎりぎりの候補者のような節操のなさだが、実際似たような立場なんだからなりふりかまっていられない。遭遇した奴が原作で馬鹿扱いされていた奴でも、OVAのクナップシュタインの三十年後といった容姿の、いかにも要領の悪そうなクナップシュタイン男爵であってもガイエスブルク要塞で捕虜になって愛想笑いを浮かべていた貴族であっても──メインテーブルから少し離れたところで迷惑そうな男爵につまらない話を長々としていた太った貴族の赤ら顔は見間違いようがない──舌打ちなどせずに笑顔をふりまくとも。能力的には微妙な奴やその親戚?とはいえ、コネには違いないのだから。
繰り返すがこの帝国、貴族社会で生き残るには何をおいてもまずコネ、顔の広さだ。門閥貴族、権門と繋がりがあるとないのでは、繋がりが太いのと細いのでは出世も、危なくなった時の保護の手厚さもまるで違う。
『いいぞいいぞ、この調子でコネを作りまくってやる!』
躾がよく才気にあふれた美少年を演じながら──もちろん、原作のグリルパルツァー同様実際に才気を研ぎ澄ますことも怠ってはいない──、帝国騎士たちの集まっている庭園、上層平民が集められている庭園そして子供のために遊園地が用意されている小庭園と歩き、たっぷり百人とも話しただろうか。
行動開始から正確に二時間後。
ご一門の方々や末流、縁者の帝国騎士がたのほとんどとは挨拶だけだったが、何人かとは形式的な挨拶以上の会話をして顔を覚えてもらえた感触を得て、俺はささやかな冒険を終えた少年の顔でアルノルトの前に現れて驚かそうと小庭園から主庭園のほうへと足を向けた。
あまり売りこみ過ぎるとがつついた成り上がり者だと蔑まれてしまう。引き時を心得るのも出世のためには重要だ。
だが、そうそう都合よく事は終わらなかった!
運命の神は俺の願いを過剰なほどに聞き届けてくれるつもりらしかった。
「ハンス!ハンスどこなの!…そこのお前、ハンスを見かけませんでしたこと?」
「いいえ、奥さま」
いかにも位の高そうな貴婦人に呼び止められたのが、喜劇と言うより他に表現のしようのない第二幕の始まりだった。
「うわああああーん、ロベルトぉーーー」
「ちちうえーーーー、ははうえーーーーー」
「大丈夫だよ、あそこにいる大尉さんがきっと父上母上を見つけてくれるから」
大人にはきはきとあいさつし、背筋を伸ばして歩く俺は迷子の子供にとって頼もしく映ったらしく。遊具を移動するたびに俺は迷子の子供にしがみつかれたり泣きつかれる羽目に陥ってしまったのだった。
これもコネ作りの目的を果たしている、目的にかなっていると言えなくもないが、なんとも爽快感
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