第三部
名誉と誇り
さんじゅう
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つであり、2人にとっては通過儀礼のようなものだ。
「まぁ、冗談はさておき。姐御はなんか感じませんかね?」
――ほら、変わらない。
フォウは溜息を付きながらも、「何がだ?」とピピンへと問う。
「いやぁ、オレッちの勘違いならいいんですがねぇ……」
「だから何だ……。言わなければ分かるもんも分からん」
前置きが長いんだと、暗に含めた言い方でフォウは先を促す。
「うーん。質はまあ言わずもがな、ってな具合なんですがねぇ……。ちょろっと、急に魔物共と遭遇する確率が増えた気がするんでさぁ」
「……こんなもんじゃないか?」
「いや、ならいいんですがね。オレッちのただの勘違いで」
言っている意味、その奥にあるものが分からず、フォウは眉を寄せて首を傾げる。
「気になるなら、団長に相談した方がいいだろう。……ちょうど終わったみたいだしな」
そう言って向けた視線の先。
あの豚面鬼の巨体を、雄叫びを挙げながら自慢の大槌で横殴りに吹き飛ばすガルドの姿があった。
―
「あん? 急に魔物との遭遇率が上がったって?」
豚面鬼との一戦を終え、水筒で喉を潤しながらガルドはピピンの言葉に耳を傾ける。
「いや、オレッちの勘違いならそれでいいんでさぁ。ただオレッち達の人数が多いのと、ほとんどが小鬼やら大猪やらで速攻で片付けられる、大したことねぇモンばっかだったもんで気付きづらかったんですが……」
ガルドを見上げながら推論を口にするピピンは、どこか自信がなさげながらも、確かな口調でそれを伝えきる。
そのガルドは、頭髪のない自身の頭をごつごつとした岩のような手のひらで撫でながら、唸る。
「フォウ。オメェは気付いたか?」
「いや、全くだな。だが、ピピンが言うのだから間違いないはずだ」
「だな。俺ら団の『目と耳』が言うことだ。それに、警戒するに越したこたぁねぇ」
そう言って男臭い笑みを浮かべて、岩のような手で小男の頭を乱暴に撫ぜる。
「おうオメェら! しっかり得物の状態確認しとけ! 豚共の討伐部位を取ったら陣に戻るぞ!」
ピピンは『餓狼団』の中では中堅どころに位置し、当然のことながら幹部ではない。
そして、傭兵としてはそれなりには戦えるが、実は武器を用いての戦いは不得意としており、本当に『それなり』なのだ。はっきり言って単純な戦闘能力だけを見れば、傭兵団の中でも下から数えた方が早い。
しかし、団長であるガルド、幹部であるフォウはもちろんのこと、古参の団員、その他幹部からの信頼は厚い。
それは、傭兵としては低すぎる戦闘能力を補って余りあるほどの観察眼、視野の広さ、敏捷性に危機察知能力、そして勘の鋭さを、彼ら『
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