7話
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……」
「……」
まずい、非常にまずい。胃が痛い。
僕の両腕はたっちゃん先輩の顔の横にあり、両足の間にたっちゃん先輩の身体がある。
……その、なんだ、一般的にはこれは僕が先輩を『押し倒した』というのではないだろうか……?
たっちゃん先輩は胸の前で拾ったドリンクを両腕で抱えていて、顔がちょっと赤い。
わー、たっちゃん先輩の肌白くて凄いキレー。こうやって近い距離で見ると目の色赤いルビーみたいで宝石っぽいなぁ。うわ、凄い惹きつけられる。石鹸のいい匂いもする。
「鬼一くん、おねーさんのことずっと見てるけど惚れちゃった?」
その言葉で現実に引き戻される。
からかうような声で僕を現実に引き戻したのは猫目になったたっちゃん先輩。
違う、さっさとどけなきゃ。
って、身体が動かない!?
僕はたっちゃん先輩の目に止められたように動けなかった。それくらい惹かれていたんだと思う。艶っぽく輝くに光に吸い込まれそうだった。
ドリンクから手を離し、たっちゃん先輩の右手が僕の左頬に触れる。
ひんやりと気持ちよく、滑らかな曲線をしている指先が僕の左頬を静かに撫で、呼吸が僕の鼻先に触れる。
「……せっかく鬼一くんが頑張ったんだもの。おねーさんに甘えてきてもいいのよ?」
カタカタと両手の指先が震える。頭が熱を持ち始め、息が荒くなってくる。
まずい、そうじゃない、たっちゃん先輩が今までと違って凄い可愛く見える。
だから違うんだって! そうじゃない! 落ち着け僕!
「……っ!」
あれ? 口から言葉が出てくれない!?
金魚みたいに口をパクパクさせるだけで何も発してくれない。
金縛りみたいに身体が固まって動けない。頭の芯からじんわりと熱が溢れ始めてきて視界がクラクラし始める。両手に連動してきたのか両足も震え始めてくる。たっちゃん先輩の指先が頬から僕の唇をなぞる。
「あら? 鬼一くん、緊張しちゃって動けないのかしら?」
色気のある笑みを浮かべながらたっちゃん先輩がドリンクを手放した左腕と、唇をなぞっていた右手と一緒に僕の首に回す。
そこでたっちゃん先輩の首筋に一滴の赤い液体が濡らした。鼻が熱い。
「……って鬼一くん大丈夫?」
僕の記憶はそこで途切れた。
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