暁 〜小説投稿サイト〜
世界最年少のプロゲーマーが女性の世界に
7話
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手による攻撃だったが、そのせいでISの爪も原型を留めていなかった。後半のブルーティアーズの嵐を突っ切ったせいか装甲もボロボロだった。ひどいところで装甲が溶解して中身が見えている。
 
 ―――散々対策練って練習して、これが限界か。危なかったな……。

 呼吸が少しずつ落ち着くに従って、思考に余裕が生まれる。
 そこで鬼一は気づいた。
 
 試合前に考えていた思考や試合の内容を忘れていることに。
 今までにも何度かこういったことがあった。
 後で振り返ってみると前後の記憶が曖昧になっている、もしくは覚えていないことが鬼一にはよくあった。自分にとって大切な、もしくは大きな戦いになればなるほどそういった傾向が鬼一にはある。
 そんな自分に苦笑し、しょうがない、あとでこの試合の映像を見て思い出しながら反省しよう。と考えてそこで始めて気づいた。

 俯いていた視線を上げて周りを見渡す。
 不気味なほどに静寂しきっている観客席。
 観客席にいる大部分の女生徒達は目の前の光景が信じられなかった。大部分の女生徒たちやセシリアにとってこれは戦いなどではなく、愚かな男の公開処刑、ショーのようなものだと思っていたからだ。だが、蓋を開けてみればどうだ。処刑の執行者が地面に伏し、処刑されるはずの豚がなぜか立っている。
 その光景に理解できなかった。認めなくなかった。
 はたして鬼一の行った行動の凄さを理解している人間はどれほどいたのか、更識 楯無、ピット内にいる教師2人と説明を受けた生徒2人以外にこのアリーナ内にあと何人いるのか。
 少しずつ、少しずつセシリアが敗北し鬼一が勝利したことが理解できるにつれて、観客席の女生徒達の視線が変わる。
 そしてその視線を受けて、鬼一は困惑を隠しきれなかった。

 なぜ、自分とセシリアにそこまで怒りや憎しみの籠った視線が飛んでくるのか。

 戦いが終わったらギャラリーは対戦者の2人を讃えるのが礼ではないのか、と。
 最悪、自分がこんな視線を向けられるならまだ理解出来る。先ほど散々皮肉を言い、煽ったのだ。そのことで視線を向けられるなら分かる。
 だけど、なぜ敗北したとはいえセシリアにまでこんな視線を向けるのだ?

 この時、鬼一は気づいてしまった。

 目の前にいる連中は勝者であるはずの女を汚した男と、そして男なんかに負けたセシリアと責めていたのだ。
 なんで男なんかに、女であるお前が、代表候補生であるあんたが、負けているんだ、と。

 起き上がったセシリアがその視線に気づく。その意味も。その怒りも憎しみも。
 顔を青くし泣きそうな顔になったセシリアが鬼一の視界に入る。

 困惑が怒りに変わる。

 ふざけるな。

 確かにセシリアは戦いの場でしてはならないことをしてしまった
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