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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十六話 第七次イゼルローン要塞攻防戦(その2)
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れんな……」
ゼークトは不安に囚われている。私を一人にすることに、自分が敵に乗せられているのではないかという事に。この男の苦衷を理解してやれるのは私だけだ……。ならば私が出来るのはこの男を不安を少しでも軽くしてやる事だろう……。
■ 帝国暦487年4月24日 02:00 イゼルローン回廊 特設任務部隊ヤン・ウェンリー
「要塞駐留艦隊、イゼルローン要塞を出撃。帝国領方面に向けて進撃中」
オペレータの声が艦橋に響く。第一段階は成功した。基本戦略である ”敵を分断し各個撃破する” は成功しつつある。後は駐留艦隊が遠征軍と合流する前に要塞を奪取する。
「グリーンヒル中尉、次の作戦行動開始時間は六時間後だ。シェーンコップ大佐に伝えてくれ」
「はい」
ローエングラム伯がオーディンを三月十五日に発ったというシトレ本部長からの情報は正しかったようだ。フェザーンは間違いなく同盟に味方している。この作戦の第一の鍵は、いつローエングラム伯がオーディンを発つかを知る事だった。
オーディンからイゼルローンまでは約四十日の日程だ。出立日さえ知ればそれを利用して駐留艦隊を動かす事は出来る。次はシェーンコップの番だ。
この待機時間が六時間、要塞奪取に約一時間、艦隊の入港に二時間。合計九時間、遅くとも十時間後には要塞を完全に手中に収めなければならない。一つの間違いも許されない。時間との勝負になるだろう……。
■ 帝国暦487年4月24日 08:00 イゼルローン要塞 トーマ・フォン・シュトックハウゼン
またイゼルローン要塞に通信が飛び込んできた。遠征軍の艦船からだが要塞近くまでたどり着いたが反乱軍の追撃を受けているという。援護の砲撃を依頼するとある。
どういうことだ? 遠征軍の艦船? ゼークトとは出会わなかったのか?
「スクリーンに艦影!」
「拡大投影」
オペレータの声に反射的に命令を下した。
ブレーメン型軽巡が二隻、要塞に近づいてくる。動きが頼りないのは損傷しているせいか? その背後に多数の光点が見えるのは敵か……。司令長官は、ゼークトはどうした? 何故二隻だけ要塞に来る。
「軽巡より通信が入りました」
「なんだ? 何を言ってきた?」
もどかしい思いで答えを求める。
「要塞は未だ帝国の手に有るや否や。答えられたし」
「!」
衝撃が私を襲う。遠征軍はイゼルローン要塞が落ちたと思っている。それ程の大軍が遠征軍に押し寄せたのか?
「返信せよ。イゼルローン要塞は難攻不落なり、疑うな!」
思わず怒鳴るように答える。オペレータが返信するのを聞きながら、スクリーンを見る。一体反乱軍はどれ程の大軍を動かしたのだ。不安が募る。
「軽巡、一隻破壊されました!」
「!」
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