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ソードアート・オンライン《風林火山の女侍》
肆:攻略戦
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ダークライン様が黙っちゃいねぇぞ!」

 言葉を返したのは目の前にいるクラインだった。彼は自分の体でセリシールを守ると同時に自慢するように言うと、身長差のあるコーバッツに負けず劣らず、睨み返し、声を荒げた。
 先ほどのデュエルで済むのならまだ生ぬるい。一つ爆弾を投下すればその時点で大暴動が起こってもおかしくない、一触即発の状態だ。《軍》のメンバーもこちらに気付いたのか、動き出そうとする。しかし、コーバッツに人望がないのか、はたまた実力差が分かっているのかコーバッツの近くにまでくるプレイヤーはいなかった。

「お前ら落ち着けって……」
「貴様も我々にたてつこうというのか?」
「違う。そうじゃない。ここで俺たちが対立してもどちらにもメリットはない。それに、街に帰ったら公開予定のデータだったしな」
「キリト君……それはさすがに」

 このピリピリしている中、キリトはさっと間に入りクライン、アスナを手で制し、コーバッツへと向きなおる。するとささっとウィンドウを操作し、自身がマッピングしたデータをそのままコーバッツへと提供した。

「マップデータで商売する気はないさ」
「人が良すぎるぜキリトよぉ……」

 コーバッツは無言でそれを受け取ると、表情一つ動かさず軽くマップを確認し、そのまま閉じた。

「協力、感謝する」
「あの子の言い方もあれだけど、ボスにちょっかい出す気ならやめといたほうがいいぜ」
「それは私が判断する。諸君が決定することではない」

 とはいいつつ、この男にそんな状況判断ができるのか、と攻略組の面々は考えた。いくら体力的な疲れがないVRとはいえ精神力の疲労は存在する。

「…………明らかに」
「セリー……しっ、いろいろとめんどくさいからっ」
「ぁっ……ご、ごめんなさい…………」

 またしてもぼそりとセリシールが口を挟もうとしたところで、アスナがさっと自分の口に人差し指を立て喋るなとジェスチャーを行う。そこで彼女は自分の失言に気付いた。確かに彼女が口にした言葉は正しい、と思えるのが多かっただろう。しかし、今この場で言うべきことでも、そのような言葉使いでもなかった。
 実際に、この場でキリトが収めてくれなったら《軍》と攻略組が少なからずぶつかり合っていただろう。ともなればこれからの攻略、どちらかの関係がギスギスとし、支障が出るのは間違いない。

「…………っ」
「よしよし」
「ちょっと先の騒ぎで調子に乗ってたな、姫」
「でもセリシールがここまでむき出しになるのもいい傾向だ」

 風林火山の一人、縦にも横にも大きい男性がセリシールの頭をぐしゃぐしゃと撫でる。彼らはただ、慰めているわけではない。それでもやはり、風林火山は優しい。そしてその中に逃してはならない厳しさがしっかりと言葉に含められ
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