泣いているのは
泣いているのは
夜一人で歩いていると
不意に何か声が聴こえる
耳をすませばそれは泣いている声
声がする方にどうしたのと尋ねてみると
今度は無理をした笑みになる
泣いていたのはまだ若い少年で
友人のお通夜の後だったらしい
人は何時か死ぬけれど そのあまりにも早い死は
決して気持ちのいいものじゃない
死んだ人は何があっても帰って来ない
この少年の友人も同じ
まだ若いにも 親より先に死んで
残った友人もこうして男泣きしている
そのことに深い悲しみを感じながらも
僕には何かをすることはできはしない
無力と言えば無力で
けれど死は誰にもどうにもできないものだから
今はこの少年に声をかけるしかできない
また何時か会える筈だと
死んでも生まれ変わって若しくは天国で
友人と会えるもの
それに少年の心の中で生きているから
彼のことはいい思い出にして
前を向いていくしかない
それが残された者達ができるたった一つのこと
友人を悲しませたくなければ前を見て
歩いていくしかない
だから彼にもそれを言う
前を向いて歩こうと
偉そうなことを言ってしまったけれど
彼はそれを頷いて受け入れてくれた
わかった顔になってくれて
そうですねと一言
けれどそれで充分だった
彼はもう泣いてはいなかったから
死だって誰にでもあるし別れだってある
生きている限りそれは続く
それでもそれは人の宿命だから
受け入れるしかないから
だから友人の死は静かに受け止めて
前に進むしかない
それを自分の口で言うのはどうにも
照れ臭いし偉そうだけれども
それでも言ってよかったのかなと
夜の中で一人思うのだった
泣いているのは 完
2007・5・15
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