6部分:第六章
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第六章
父「御前もあの世へ行って」
母「ああ、いいよ」
僧侶はそれを家の中から耳をそばだてている。片輪車には気付かれないように用心深く。片輪車はそんな家の中には目もくれずじっと二人を見据えている。
父「じゃあわかった」
母「いいね、それで」
二人は意を決する顔になる。
母「じゃあ」
車「決まったのかえ」
片輪車は二人に対して問い掛ける。
父「はい」
母「今しがた」
二人は意を決した顔でそれに頷いてきた。それを受けて車は二人に問う。
車「では答えを聞きたい。どうなのじゃ」
父「はい」
母「私共が参ります」
二人はその顔のまま述べた。
車「そなた達がじゃな」
母「そうです。ですから娘は」
父「ちよは返して下さいませ、こちらへ」
車「わかった」
二人のその言葉を聞いて頷く。そこには表情も感情もない。
車「ではそのまま過ごすがいい」
母「そのままとは?」
車「そのままじゃ」
片輪車はそれを繰り返す。
車「家族で暮らせと言っているのじゃ」
父「それはどうして」
母「何故でしょうか」
車「ここで主等が己を庇うならば違っておった」
この言葉にもやはり感情はない。務めて消すべき。
車「皆あの世に連れて行っておった」
父「皆ですか」
車「じゃが主等は自分の身を娘の為に捧げようとした。その心に免じてじゃ」
母「ではちよは」
車「既に家の中におる。安心せよ」
父「家の中にですか」
車「左様」
車は答える。
車「私は嘘は言わぬ。安心せよ」
父「何と」
母「有り難うございます」
それを聞いて思わず頭を垂れる。
母「ちよが、ちよが」
車「あの娘はよい親を持ったものじゃ」
ここでやっと感情がかいま見られる。
車「ではな。これからも娘を大事にするがいい」
母「はい」
車「そういうことじゃ。さらばじゃ」
そう言い残して車に乗ったまま去る。
ガラガラガラガラ
音が遠くへ消えていく。後には二人が残る。
僧「あの」
家の中から声がする。
父「あっ」
その言葉にはっとする。
父「お坊様、ちよは」
母「家の中ですか」
僧「はい、こちらに」
僧侶がここで娘を抱いて家から出る。娘はぐっすりと眠っている。
父「無事だったんだな」
母「本当に。どうなるかと思ったけれど」
安らかな顔で寝息をたてる娘の顔を見て嬉し涙を浮かべている。それはまさしく親の顔である。僧侶もそれを見てにこやかに笑っている。
僧「一件落着ですな」
母「はい」
満面の笑顔で頷く。
母「ちよも戻ったし」
父「何も知らなかったように寝て」
僧「いえ、それがいいんですよ」
父「よいのですか、それが」
僧「はい、こうしたことは大人だけでいいのです」
母「
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