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片輪車
6部分:第六章
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そうですね。子供には苦労はかけずに」
僧「苦労をするのは大人の仕事」
父「子供の為に苦労をするのが」
僧「そういうことです。さあ」
 母に子供を手渡す。母はそれを笑顔で受け取り抱く。
母「本当に。だから子供に何かあったら」
僧「親は何があっても助けないと」
母「そうですよね。本当に今回のことで」
父「思い知らされました」
僧「この度は拙僧が何かをしたわけではありません」
父「そうなのですか」
僧「はい、全ては御二人で為されたことです」
父「私達が」
母「ちよを助けたと」
僧「子供を助けるのは何よりも親の心。そういうことなのです」
 前を向いて言う。
僧「それをお忘れなきよう。子供は親の愛情あってのものなのですぞ」
 最後の一言が終わるとまたあの歌が謡われる。


 おやごころ
 他のなににも
 まされけり
 それを知らざば
 恐るものなし


 その歌が謡われる。僧侶が最初に身体を正面に向ける。その顔には満面の笑みがある。
 夫婦も舞台の前を向く。そ後ろに満月が現われその光の下で終幕となるのである。


片輪車   完


                   2006・11・25

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