第五章
[8]前話
「冬用もお願いね」
「特別な日に着るわね」
「私もね」
妻も娘達と同じ笑みで言う。
「お願いするわね」
「ああ、わかったよ」
モサーイドは今度は明るい笑顔で三人に答えた、そしてだった。
次の日職場でマスルールに家でのことを話した、するとマスルールは彼に笑ってこう言った。
「うちもだったよ、うちは娘三人だがな」
「四人共か」
「そっちと同じ感じだったよ」
「そうか、滅多に着ない服でもな」
「冬用も買ってくれだよ」
四人共こう言ったというのだ。
「やれやれだよ」
「本当にな、しかしな」
「それでも買うな」
「そうするさ」
モサーイドはマスルールに笑って答えた。
「女房と娘達の為だ」
「そうだな、俺もだよ」
「そこは本当に同じだな」
「ああ、じゃあまた買おうな」
「冬用もな」
「そうしような」
「じゃあ今日は働くか」
マスルールにこうも言った。
「冬用も買う為にな」
「そうだな、真面目に働いて稼いで」
「娘達に買ってもらおうな」
「そうしような」
二人で話してだ、そしてだった。
二人は実際に頑張って働いた、社長はその二人の言葉を聞いて笑って言った。
「二人共今日はよう頑張ってるな」
「はい、女房と娘達に服を買う為に」
「俺もそうしています」
「その為には金が必要ですから
「何といっても」
「そうか、じゃあ頑張れよ」
社長は二人の言葉を聞いて気さくな笑顔で返した。
「家族の為にな、家族の為に働くことこそがな」
「まさにですね」
「美徳ですね」
「アッラーが喜ばれることだからな」
社長もムスリムなのでこう言う、
「頑張れよ、じゃあわしも女房と子供達の為に」
「働くんですね」
「そうするんですね」
「ああ、そうしないとな」
陽気な声での言葉だった。
「家族の為に」
「ですね、じゃあ」
「お互い頑張りましょう」
二人は社長と明るく話して仕事を再開した、また家族にプレゼントをする為に。笑顔でそうしたのだった。
ジュラバ 完
2016・5・26
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