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ジュラバ
第四章
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「着てみるわね」
「それでお父さんに見せてあげるわね、ジュラバ」
「私も」
 妻も言う。
「着てくるわね」
「ああ、頼むな」
 モサーネドもこう言ってだった、娘達と妻を送った。彼女達は着替える為にジュラバを持ってそれぞれの部屋に入った。そして暫くして戻って来たが。
 フードの着いた長いコートだった、コートの長さは足まで完全に隠す程で袖も広く手まで隠す程である。その袖と服の前の部分の中央、フードの端のところにそれぞれ模様がある。
 上の娘は赤、下の娘は黄色そして妻は青のそれぞれの色だ。妻の顔のところには白いハンカチの様な覆いがある。
 その覆いを見てだ、モサーネドは微笑んで言った。
「ちゃんとレタムも付けてくれたんだな」
「結婚してたらでしょ」
 そのレタムも付けている妻も言う。
「これは絶対でしょ」
「ジュラバを着ているならな」
「だから付けたのよ、一緒に付いていたしね」
 そのジュラバにというのだ。
「そうしたのよ」
「ちゃんとそこまでしてくれたんだな」
「こうしてね、それでどうかしら」
 自分のジュラバ姿を夫に見せながら他ならぬその夫に問うた。
「似合ってるかしら」
「私はどう?」
「私も見て」
 娘達も言ってきた。
「似合ってる?」
「どうかしら」
「ああ、三人共よく似合ってるよ」
 モサーイドは妻と娘達に微笑んで答えた。
「よくな」
「そう、それはよかったわ」
「滅多に着ない服でもね」
「似合うって言ってもらったら何よりよ」
「三人共たまにはな」
 滅多に着なくてもとだ、モサーイドは妻と娘達にここでこう言った。
「ジュラバも着ろよ」
「そうね、お祝いの場とかね」
「特別な日はね」
「着るわね」
「それは綿だから夏用だ」
 三人に買ったジュラバはというのだ。
「今度同じ色で冬用のも買うな」
「あれっ、これ夏用なの」
「そうだったの」
「ジュラバは夏用と冬用で生地が違うんだ」
 娘達にだ、モサーイドはすぐに答えた。
「元々はこの国の砂漠とか山の方の厳しい気候に適応する為の服でな」
「夏用と冬用もあるの」
「そうだったの」
「冬用の生地はウールだ」
 夏用の生地が綿なのに対してというのだ。
「今度そっちも買って来るな」
「ええ、それじゃあね」
「お願いするわね」
「私のも買ってくるの?」
 妻は夫に問うた。
「そうするの?」
「ああ、そのつもりだ。その時はな」
「じゃあ楽しみにしてるわね」
 妻は夫の返事に微笑んで返した。
「その時はね」
「ああ、しかしな」
「しかしって?」
「滅多に着ないんだろ、三人共」
 妻だけでなく娘達にも苦笑いでこう問うた。
「それでも欲しいのか」
「だって服は何着あってもいいから」
「だからよ」

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