第一章
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ジュラバ
モロッコの街の一つカサブランカに住むモサーネド=バンアーは難しい顔になってだ。今は街中を見回していた。
そして同じ職場で働いている友人のマスルール=ムアーウィアにこう言った。
「俺は悲しいよ」
「最近のカサブランカのファッションについてか?」
「ああ、西洋化が進み過ぎだろ」
こう言うのだった、その口髭を生やした褐色の顔で。肌の色はアフリカ系であるが顔立ちはアラブのそれで彫がありはっきりした黒い目である。眉は太く唇は薄く引き締まっている。マスルールは純然な黒人で髪の毛は縮れている、逞しい大男でその名前のアラビアンナイトの実在の登場人物と同じ様に刀を持てば似合いそうだ。
「幾ら何でも」
「そう言うがここはな」
「カサブランカだよ」
「観光地だぞ」
モロッコ一のだ。
「それならだよ」
「ファッションの西洋化もか」
「当然だろ」
欧州から多くの観光客が来ているからだというのだ。
「それなら」
「そう言われるとな」
モサーネドもだった。
「納得するしかないな」
「イスラムだけれどな」
モロッコもイスラム教国だ、それでだ。
「それでもだよ」
「商売も大事か」
「ムハンマドもそうだっただろ?」
「商人だったよ」
このことは誰もがよく知っていることだ、イスラム教の開祖にして最後の預言者であるムハンマドは商人だった。
「だからイスラムもな」
「商売は大いにいいことだって言ってるだろ」
「ああ、錬金術もよかったしな」
だからイスラム社会ではこちらの学問も大いに発展した、そしてここから科学技術までもがその基礎が育まれたのだ。
「だからか」
「商売をしろ」
何といってもというのだ。
「アッラーも言われるぞ」
「そしてその商売の為にもか」
「ああ、そうだ」
まさにというのだ。
「服もな」
「イスラムじゃなくてもいいか」
「というかこれ位はな」
服装、ファッション位はとだ。マスルールは達観しつつ言う。二人で街の喫茶店のテラスの席でコーヒーを飲みつつ行き交う人を見ながらの言葉だ。
「アッラーも言われないだろ」
「アッラーは寛大だからか」
「そこはキリスト教の神様とは違うさ」
同じ神だが性格は全く違う、旧約及び新約の聖書の神とコーランの神は同じ筈だがその性格は別の神の如きだ。これは登場人物達も同じである。
「アッラーは偉大だろ」
「そして寛容だな」
「だからな」
それで、というのだ。
「服位はだよ」
「許して下さるか」
「商売の為だ、もっともな」
マスルールもこんなことを言った。
「こう言う俺も最近の風潮はな」
「行き過ぎか?」
「そう思うな」
街行く少女達のミニスカート姿を見ながらの言葉だ、見ればそ
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