4部分:第四章
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第四章
母「左様です」
僧「そこに白い服の女が座っていると」
母「そうなのでございます。人も馬も牛もそれを引いてはいません」
僧「ふむ」
それを聞いて考える目をしてきた。何か思い当たるところがあるかのように。
母「何か御存知でしょうか」
僧「ええ、それでしたら」
納得したように頷く。知的な様子である。
父「どの様な化け物ですか、それは」
僧「片輪車ですな」
そう述べる。
父「片輪車ですか」
僧「左様です」
彼は答える。
僧「それはかなり変わった化け物でして。いや」
父「何かあるのですか?」
僧「ええ。あながち化け物とも。むしろあちらの世界の者でしょうか」
母「あちらの世界ですか」
僧「はい」
彼は二人に対して応える。やはり穏やかで問い聞かせる様子。
僧「見た者をあの世に連れて行く化け物です」
母「ちよがあの世に」
それを聞いて口を両手で抑えて真っ青な顔になってしまう。
母「そんな、それだと」
僧「確かに今のままでは非常に危ないです」
父「ええ」
僧「ですが」
ここできっと思いのある顔になる。
僧「方法があります」
母「それは一体」
彼女だけでなく夫も身を少し乗り出している。そして僧侶の話を聞こうとしている。
僧「心です」
母「心、ですか」
僧「左様」
それに答えて頷く。
僧「貴女達にそれはかかっております」
母「私達にですか」
父「それはどうやって」
僧「それはですね」
二人に対して言う。
僧「宜しいですか」
夫「はい」
母「何でしょうか」
僧「変わった方法を採ります」
母「変わった方法ですか」
僧「左様。まずは」
思案した顔になって述べる。
僧「まずはですな」
父「はい」
僧「私は奥に下がります」
父「えっ」
母「何故でしょうか」
二人はそれを言われて思わず声をあげる。
僧「私がいればかえって邪魔になるからです。いいですか」
父「はい」
僧「ここは二人の御心です。何としても娘さんを取り戻したいのですな」
母「そりゃそうです」
きっとして言う。
母「だからこうやって」
父「御呼び致しましたし」
僧「その御心なのですぞ」
また二人に言い聞かせる。
母「この心ですか」
僧「そうなのです。ですから」
父「心をしっかりと持ってですか」
僧「はい、それです」
父「そうなのですか」
僧「そうです。それで」
急に遠くを見る顔になって述べる。
僧「もうすぐその化け物が来るでしょう。そしてそれに言うのです」
母「わかりました」
父「じゃあ何があっても」
僧「はい、宜しいですね」
母「ええ」
父「何があっても・・・・・・あっ」
ガラガラガラガラ
ここで車の音が聞こえてくる。僧侶は
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