第二十六話:目覚め、纏うは“吼殻(オリクト)”
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――――ゼェアァアァァァッ!!」
―――胸の内から競り上がって来た物ごと、拳に宿らせ思い切り振り抜く。
俺の一撃は唸りを上げてロザリンドの頬に突き刺さり、今まで一番重く高らかな音を上げて彼女を吹き飛ばした。
派手に草地を跳ね、転がり、樹木にぶつかりへし折りかけて……漸く止まる。
「ハァ……ハァ……!」
地に転がった彼女を俺は油断なく凝視する。
数秒過ぎ、数分に到達し、しかしロザリンドはピクリとも動かない。
恐らく五分は経っただろう……それだけたっぷりと沈黙を貫き、俺は声を絞り出す。
「俺の―――俺達の、勝ちだ」
思った以上に疲れきって如何にも覇気の無い声と、勝敗もクソも無いだろう闘いの後にこんな事を行ったと自分で呆れつつ、視界をなおも塞ごうとする血を拭って地に払い落とす。
近寄ってくるマリスの柔らかな足音を聞き、俺はドカッ、と音を立てて草地に座り込む。
「……麟斗」
心配そうに見詰める透明な瞳を、俺は正面から見つめ返し、手を延ばす。
無言で頭を撫でる俺の手は、血とドロで汚れているだろう。
……なのにマリスは払う事無く、寧ろそれを自分から頭を下げて受け入れる。
そうして暫くの間、無言のまま俺が撫で、マリスが受け入れるという一幕が続くのであった。
「兄ちゃん! 私の事忘れてない!?」
「「あ」」
「あ、って! あ、って!! ……マリスたんまであ、って!?」
―――いざという時の為に地中で待機していた、楓子の存在を思い出すまで。
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