第二十六話:目覚め、纏うは“吼殻(オリクト)”
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ねぇだろうが、クソが……!
「……っ……! やってやる……やってやらあ!」
だから、俺は真っ向からロザリンドを睨み据える。
一歩も引かず、下へ下へと体重を掛ける。
【牙】を頭上に掲げ、右腕をがっちりと添え―――真正面から、『受け止める』為に……!
「割れろおおぉぉぉぉっ!!」
「……ぎぃ……っ!?」
俺の【牙】とロザリンドの【剣】が衝突し、空気すら揺るがす衝撃波が迸る。
(重、い……! ……クソ、痛ぇ……っ!!)
何トンもあるトラックの重撃と、日本刀の如き鋭い痛撃の、その二つが同時にぶつかって来た様な一撃に、俺は思い切り顔を顰める。
焼かれた事により一時的にふさがっていた傷も開き、額から、肩から腕から、脚からも血が流れ出て来た。
“逃げろ、逃げろ、逃げろ”
予想など遥かに飛び越えたその剣撃は、脳裏に弱音を響かせてくる。
その言葉に思わず従い、横へ跳び退いてしまいそうになる苦痛を、コレでもかとぶつけて来やがる。
「断ち割れろ!! 断たれろぉおおぉぉぉおぉ!!」
だが……それがどうした。
「舐めるんじゃあ―――ねぇええぇえええぇぇっ!!」
「っ!?」
ロザリンドの迸らせる咆哮をより倍する怒号でかき消し、受け止めるので精一杯だった一撃を反す飽和を作る。
ロザリンドが優勢だったその状況に―――確かな亀裂を入れる。
当然ながら俺に、コイツの命を取る気はない。
されどそれはコチラの話。向こうは『間違い』が起こるまで、絶対に止まらない。
騎士としての立ち位置を無理矢理繋ぎとめようとしている以上、和平を申し出ても撃ち落とされるだろう。
……何よりそんなもの、本当に今更過ぎる。
だから彼女を止める為に―――”全力”で拳を使ってやる。闘いが始まってから、オレはひそかにそう決めていた
その為に一瞬を……この時を待っていたのだから
「っ!」
たたらを踏みよろめいたロザリンドへ目掛け、歯を食いしばって一歩踏み込む。
必殺の一撃を崩された彼女の顔には、可哀想に思えるほど濃い絶望が張り付いていた。
……それでも同情はしない。
テメエだけの正義感で事を推し進め、何を背負うべきかも明確にせず、騎士である自分に酔って後先考えない“バカ”をやったコイツには。
何より、向こうがどんな存在であるかを―――マリスの真実から目を逸らしたコイツにだけは。
「く、来るな……クルナアアァァアァアァァ!?」
ロザリンドの悲鳴を無視し、より体を突っ込ませる。
右拳を、音が鳴るぐらいコレでもかと握りしめる。
片手で剣を振り降ろそうとする様を、射殺さんばかりに凝視する。
そして―――
「っ
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