第二十六話:目覚め、纏うは“吼殻(オリクト)”
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り、右手、両足、体全体を使って防ぐという自分でも呆れ果てる捨て身の防御に走る。
体中に火傷を負い、切り傷を刻み、目に流れ落ちて来る鮮血で視界が薄赤く染まってくる。
それでも防御は止めない。
膝すら付いてなるものかと、己を奮い立たせ続ける。
「っ……ァアアアァァァっ!!」
切迫の色濃い怒号と共に振出される、一際大きな焔刃に俺は一瞬目を剥いた。
遠間より肌を焼く熱気、まだ距離があるというのに間近にあると思える圧力。
受け止め捌ききれるのか……違う、否応にも“捌かなければ”いけない……!
ほぼギリギリのタイミングで左の【牙】を空へ叩き付けんばかりに振り上げ、伝わる衝撃を強引に無視して更に力を送る。
「ぐぁ……ラアアァッ!!!」
本当に炎で形作られているのか不思議なぐらいの、豪快且つ重厚な轟音を立て跳ね上げる。
奇妙ながら、それと同時にロザリンドから放たれる、焔刃の雨霰もピタリと止んだ。
これで終わり…………な、訳がねぇ。
「うああぁぁぁあぁあぁぁ!!」
その思考を読み取ったが如く、再びロザリンドが突撃。
手にした宝剣の描く軌跡は変わらず……しかしその刀身へは別次元な『何か』が絡みつき、ゾッとする程深みある輝きと、背筋凍らせる恐怖を湛えていた。
同時に今の彼女は―――最早詠唱どころか技の呼称すらしなくなる程に、追い詰められて居る事が分かった。
倒せると踏んだ相手が化物に変われば、オレとて当たり前に切羽詰まる。
『演じている』が故に脆い部分の有った彼女なら、それこそ言うに及ばず。
「喰らえぇっ!!」
迸るは裂帛の怒号……しかし、それでも攻撃は単調。
幾ら物理に特化した力を吹き込もうと、真正面から馬鹿正直に叩っ切ろうとしている時点で最早失笑モノだが―――裏を返せば、其処まで我を忘れている事に他ならなかった。
だからこそ、殺す事すら厭わない程の怪力が剣に込められ、空間すら歪んでいる。
本来ならばそんな、本能が危険だと全力で告げて来るような攻撃など、俺なら意にも返さない。
「……りん、と……っ」
だが……オレの後ろには依然、マリスが居る。
急に突っ込んで来た所為で、位置変更も出来てはいない。
よって此処で対処する “しか” 無い。
物理特化した『地』の剣相手に、中途半端な技術で受け流すなど如何考えても無謀で、ましてや避ける事は以ての外だ。
御袋や親父の援軍は、帰還を期待して待ってくれている以上視野に入れて居ない。
……楓子が何時も信じている窮地の覚醒など、考えるまでも無く論外。
なら取れる方法なんざ、もう一つしかない。
だから無謀だろうと……やるしかねぇ……
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