第二十六話:目覚め、纏うは“吼殻(オリクト)”
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、追加の右ストレートで地に転がす。
「ぬああぁぁぁ!!」
「……ちぃ」
追いすがる俺の不意を突く、起き上りざまに放たれる豪快な切り上げ。
大きく仰け反った俺は一瞬間だけ思考を止め……“牙”で草地を叩いて己の身体をバウンドさせた。
「せぇっ!!」
「―――――!?」
体勢を立て直してから間髪いれず、“牙”を使って左ストレート。
……否、左“直突き”をぶち込んだ。
腹部を鈍く、しかし強烈に殴打されたロザリンドは、声も上げられずにより後方へと吹き飛んでいった。
ド派手に草花を散らして、受け身も取らずにロザリンドは転がる。
だが突撃一辺倒に傾いた今の思考がそうさせたか、腕を思い切り叩きつけ強引に勢いを殺した。
「くぅっ……ぅ……まだだああぁぁああぁっ!!」
魔物の如くゆがめられたその顔、憤怒そのものに彩られた気迫は、彼女が本来有している“剣姫”ではなく『剣鬼』と言う単語を連想させた。
その鬼気迫る迫が一瞬緩んだ―――刹那、剣が煌き盛る大火を轟々と噴き上げ纏う。
片眼は依然として金色であり『剣聖の領域』は発動したまま。
つまりこの斬撃は、己が巨体の剣へと “力” を纏わせた、必殺の剣撃に他ならない。
「ミカエルのっ―――剣ィィィッ!!」
詠唱無しで繰り出された【ミカエルの剣】を連ねて振い、焔の三日月が続けざまに放たれた。
真正面から雨霰に降り注ぎ続けるその炎色の刃。
しかし俺は避けない……否、避ける事が出来ない。
「……麟斗っ……!」
何せ、後ろには“マリス”がいる。
【俺嫁力】すら発動できず、切り札は愚か基礎異能すら振るえない今の彼女では、遠慮一切無しに飛び交う火焔を避ける事は至難。
掠ればその時点で終わるなど、クソゲーにも程がある。
それに今のロザリンドは暴れてこそいるが、その敵意は俺だけに向けている訳じゃあ無い。
だから耐える事の出来る俺が盾となる。
……なるしか、ない。
「焦げろ! 焼けろっ!! 尽きろぉっ!!」
「お断り……だっ!!」
ロザリンドの言葉に否定を返しながら、俺に向けられる紅の殺意を上空に弾き続ける。
下手に受け止めるだけではこの天王山ハイキング場が焼け野原になってしまうからだ。
こうなる原因の一旦、その半分は俺にも当然ある。
挑発の域を超えた八つ当たりをぶつけた。だから余裕がなかった彼女から倫理を奪う原因を作ったと言える。
……だから、暴れさせてそれで終わりなど阿呆な判断だ。
被害をも減らさなければ、ブーメランを投げた独り善がりで終わってしまう。
「く、ぁ……ぁっ!!」
物量を増してくる連撃の前にとうとう【牙】だけでは間に合わなくな
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