第二十六話:目覚め、纏うは“吼殻(オリクト)”
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美味しく感じ、食中毒も無い』
…………など、此処まで珍妙勝つ奇々怪々な変貌は、有り得ないにも程があるのだ。
また例えるならば、肉体の変化。
髪が意図的に脱色するでなく、自然と灰色と成る時点で確かにおかしいが、問題は決して其処だけではない。
今の今まで強烈な痛撃に悶え苦しみ、父親の拳に分かっていても最後には抗えぬ日々が続いていたと言うのに―――脈絡も無く『相手に違和感を与える』程の変化を齎すのは正直に言って不可解極まりない。
…………一瞬の内に皮膚が硬くなったのか? それとも父親が手加減したのか?
否。
そのどれにも当てはまらないのは、他ならぬ、本人達が良く知っているだろう。
更に言えば―――麟斗はあの時あの場所で、『意識を失う』程の激痛をその身に受け倒れている。
なのに起きてから何の後遺症も無く、取り分け目立った変化など存在しなかった。その時点で、不可思議なのだと言わざるをえまい。
意識が飛ぶぐらいの激痛による結果が……倒れるだけで済む筈など無いのだから。
即ち本来麟斗の身体に起こるべき “異変” が漸く―――しかも日常生活ではまず有り得ない窮地に立ち、今まで溜め込むのみで全く上げてこなかった感情を爆発させたことにより……眠っていた【牙】が目を覚ましたのだ。
だからこそ……絶頂を迎えたその時に、内から迸り覚醒したのだ。
―――麟斗自身、今現在に限って言えば、もう既に忘れ去っている事ではあろうが…………彼に綴ったノートのとある頁には、こんな言葉が書かれている。
[その“獸躰”、大地の王の具現者なり
『重』に置いて並ぶものなどなく、『堅』に置いても、またない
だからこそ獸は、対者へとソレを知らしめるのだ
身に背負う重さを、身を縛る堅さを
願いは強く、“吼殻” が名の関する通り……宿る力はただ、ただ重い
幾ら労しようとも尚、決して欠片とも大海へは押しだせぬ、その“獸躰”
大地育む者らを統べる『陸獣』が選者、御身に宿せし“吼殻”は―――]
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「――――【Saspie?anas t?rauda ilknis】!!!」
大上段から繰り出されるロザリンドの大剣が、突き出した俺の左腕―――から伸びる『牙』で止められた。
止められていた。
他ならぬ……俺が、止めていた。
「な……にぃ……!?」
「……麟斗……!?」
俺の中には攻撃を受け止めた衝撃よりも、マリスを救
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