暁 〜小説投稿サイト〜
片輪車
1部分:第一章
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の門前町となる。
 舞台の上にはその時代の家屋が並んでいる。
 時間は夜である。灯りはなく舞台は暗い。同じ舞台に家がありそこに母娘がいる。
 母親は三十半ば程である。娘は五つ程。母は娘を抱いて家の中でじっとしている。ごく普通の一軒屋だ。といっても長屋ではなく商家のそれである。

母「さあ、もう寝るよ」
 娘に対して語る。
母「もう夜だしね」
娘「おっかあ、もう寝るの?」
母「ああ、そうだよ」
 娘に対して語る。
娘「もうなの」
母「そうさ」
娘「いつもはもっと起きてるのに」
母「ちょっと今日はね」
娘「まだ早いよ」
 そう言って母を見上げる。
娘「もっと遊びたいよ。お手玉しよう」
母「いや、今日はもう寝るよ」
 首を横に振って取り合おうとしない。
母「わかったね」
娘「おっかあ」
 娘はそう言われてもまだ諦めない。それで母に問う。
娘「だから何で今日はこんなに早いの?」
母「今日は怖い日だからだよ」
 そっと娘に囁く。
娘「怖い日?」
 だが娘はそれを言われてもわからない。きょとんとした顔で母に問う。

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